女性スタイリストが企業とのコラボレーションで生み出すヒット商品が相次いでいる。その人気の背景には、スタイリストならではのこだわりや、使う人の視点に立った製品づくりや女性の生き方への提案がある。中でも企業からのラブコールが絶えない3人のスタイリストに話を聞いた。
三人目は、広告、雑誌、CMなどで活動する佐々木敬子。2014年には、社長兼クリエイティブ・ディレクターとしてオリジナルブランド「マイラン(MYLAN)」を始動。「スウィート」(宝島社)のファッション連載「ア・ファッション・ライフ」やスタイルブック「ケティーズ・ファッション・ライフ」などを通して、一般読者からも広く支持を集めている。
WWDジャパン(以下、WWD):今までで印象に残ったコラボレーションは?
佐々木:最近だとやはり第一弾を6月に発売した「ヘレンカミンスキー」とのコラボレーション。一年くらい前に「マイラン」の展示会に来た「ヘレンカミンスキー」の方にお話をいただいたのがきっかけでカラーなど細かいところまで綿密に打ち合わせを重ねて発売にいたった。これが本当に反響が大きくて驚いた。
WWD:どれくらい売れたか?
佐々木:3色各50個限定のものが、ECサイトでは2時間で完売した。追加予約販売はスタートした時点でサーバーがダウンし、復旧して1週間後に同数で再度販売した際も同じくらいの時間で完売。SNSやインスタグラムでの反応も大きく、「マイラン」にも問い合わせが殺到した。嬉しかったけど、申し訳ない気持ちが大きかった。
WWD:ここまでのヒットになった理由をどう分析しているか?
佐々木:“旅”というコンセプトが一致していたことや、時間をかけてミーティングができたことが要因だったかな、と思う。「ヘレンカミンスキー」のお客様も「マイラン」のお客様も旅をされている方が多く、その意味では相性がぴったり。この秋冬は第二弾として、メリノウールのフェルトを使用したハット3種類を販売している。
WWD:スタイリストと「マイラン」の仕事の比率は?
佐々木:半々くらい。もともと20年くらい前からブランドのディレクションは行っていて最初に手掛けた「バナーバレット」は、立ち上げから関わった。ブランドのディレクションは常に2、3本並行することが多い。仕事を同時並行で進めるのが好きで、その意味ではスタイリストの仕事をしながらブランドを運営という今のスタイルも合っているかな。
WWD:佐々木さんにとってスタイリストの仕事とは?
佐々木:すごく小さい頃からの憧れの仕事。小学生の時に雑誌「オリーブ」を見て“こんな仕事があるんだ”と思った。スタイリストになった当初は服をコーディネートする仕事だと思っていたけど、今は人を輝かせる仕事だと思っている。一番大切にしているのは、着る人が輝いて見えるかどうか。雑誌のファッションページでも“お洋服を見せます”というよりは、紙面に登場する人が一番きれいな状態を作ることが重要だと思っている。
WWD:「オリーブ」の紙面で印象に残っているページは?
佐々木:近田まりこさんが登場されていた“スタイリストの一日”というページ。当時小学校6年生くらいだったと思うけど、こんな仕事が世の中にあるんだ!と感銘を受けて、そのページを握りしめて東京に来た。ご本人にお会いできた時は本当に興奮した。