LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は長年生産が中止されていた幻のロシアンレザーを復活させる。ロシアンレザーは16〜19世紀、西欧の貴族や王族、ロマノフ王朝の軍隊のレザーグッズに使用された高級な皮革だったが、十月革命後の1922年、ロシア政府が全ての生産を中止した。LVMHは“ボロジノ キュイール ドゥ ルシー(Borodino Cuir de Russie)”という名の下復活させる。
ロシアンレザーのコレクション第1弾は、傘下の「モワナ(MOYNAT)」が2017年1月に発売するバッグだ。ロシアンレザーの復興は、ラメッシュ・ナイール(Ramesh Nair)「モワナ」クリエイディブ・ディレクターと、ジャン・バティスト・ヴォアザン(Jean-Baptiste Voisin)=LVMHディレクター・オブ・ストラテジー兼LVMHメティエダール・プレジデントの話し合いから派生したという。ヴォアザンは「ロシアンレザーは非常に柔らかく、湿度と水にも強い。ロシア人が長年大事にしていた“秘密”のレザーとして、神秘的でもあった」と語る。復活に携わったチームはまず、材料や生産方法などの情報を「ルイ・ヴィトン」 のアーカイブからアメリカ議会図書館まで、あらゆる場所から集めた。サンプルや生産方法を入手してから、LVMH傘下のなめし工場「レ・タヌリー・ルー(LES TANNERIES ROUX)」が6カ月をかけ開発した。レザー独特の匂いを和らげるべく、LVMH専属の調香師が匂いの開発を手掛けた。ヴォアジンは「“ボロジノ キュイール ドゥ ルシー”は世界初の香りを保持できるレザー。幾つかのメゾンはすでにこのレザーの使用を検討している」と主張。
LVMHはサプライヤーと提携し、新しい開発やクリエイティビティーを生み出すプロジェクト「LVMHメティエダール(LVMH METIER D'ARTS)」を15年1月にローンチした。職人やアーティストの住宅を手掛けたり、工場とメゾンとの会話を促進することで連携を強化ている。また、同社が傘下に持つ複数のメゾンの生産技術を共有している。ロシアンレザーも、グループが手掛けるレザーのコレクションに加わる。