不動産開発やホテル&リゾート事業を行う森トラスト(MORI TRUST)は2月1日、銀座二丁目交差点に近接するラグジュアリーホテル開発に関する記者会見を行った。同ホテルの建築とデザインは隈研吾が手掛け、2020年初頭開業予定だ。
「カルティエ(CARTIER)」「ティファニー(TIFFANY)」「ブルガリ(BVLGARI)」などが集まる銀座二丁目交差点に程近いマロニエ通り沿いという好立地。森トラストはマリオット(MARIOTT)やシャングリ・ラ(SHANGRI-LA)などのインターナショナルブランドのホテル事業を展開しており、このホテルに関しても日本未上陸のインターナショナルブランドとの交渉を進めている。敷地面積約663平方メートル、13層延床面積約7000平方メートル(仮)のホテルの客室数は未定だが料金は1泊5万~8万円程度。屋上には銀座の夜景を見渡せるルーフトップバーやレストランを開設し、1階にはホテルと親和性のあるブランドの店舗も入る予定だ。来年半ば以降に着工を予定している。
海外のインターナショナルホテルの建設やデザインは、海外のデザイナーが手掛けるケースが多いが、森トラストはこのホテルの建築とデザインを隈に依頼。伊達美和子・森トラスト社長は「隈氏に建築と内装デザインをお願いすることで、インターナショナルだけど、和のアイデンティティーがある新たな世界観を作りたい」とコメント。日本らしいエッセンスを盛り込んだ作風で世界的に評価の高い隈のデザインと森トラストが持つラグジュアリーホテル開発のノウハウを組み合わせることにより、新たな価値観を提案する。
銀座という立地に関して隈は「世界を魅了するウォーカブルな街。ラグジュアリー・ブティックや百貨店に近く便利だが、裏道に面しているので静かでもある。日本の縁側のような中間領域のような面白いランドマークにしたいと思っている」と話す。中央通りには隈が手掛けたティファニー銀座店もあり、彼にとっては思い入れのある立地だ。『『銀座を紡ぎ、世界とつながる』をテーマにストリートとビル、人と人、世界と日本をつなげるような繊細な外観にするつもりだ。緑のパッサージュやグリーンに囲まれたルーフトップバーなど自然と共存する思想哲学を盛り込んだデザインを考えている』と隈。
彼は東銀座の5代目歌舞伎座も手掛けた。その際の出会いがこのプロジェクトにも生きてくるようだ。隈は「地元の職人と触れ合い多くを学び、それら職人の繊細な技をホテルの各所のディテールにちりばめる。驚きと感動を与える仕上がりにするつもりだ」と言う。「透明感や抜け感を大切に引き算していき重要な要素が残る隈氏の空間構成は世界最先端だと思う」と伊達社長。
隈の手掛けるプロジェクトの60%は海外だ。海外のクライアントとのコミュニケーションを通して学ぶことも多いようだ。隈は「世界の人が求める“エッジ”のヒントがたくさん得られる。人を通じて空間を知るのが大切」と強調。世界から注目を集める銀座という立地を生かしつつ、新たなグローバルスタンダードを持ったホテルの登場が期待される。
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