スウェーデン発のファッションウオッチ「ダニエル・ウェリントン(DANIEL WELLINGTON)」は4月6日、日本のブランド・パーソナリティーに元サッカー日本代表の中田英寿を迎えた。ブランドのアイデンティティーを体現している人物として選ばれた中田は、「旅をすることが全てではないが、いろんな経験をする可能性があるならできる限り世界を回って色んな人に会って、自分を作っていきたい」と話す。今や世界120カ国を飛び回り、目標は人生で200カ国以上に赴くこと。メディアでは旅人とも称され、実業家やファウンダーなど、ビジネスマンとしての側面も取り上げられる。そんな中田が、数多くの経験値から見出したファッション観とは? ファッション、旅、時間をテーマに現在の中田英寿に迫る。
WWDジャパン(以下、WWD):シンプルな意識に変わってきたとのことだが、洋服の選び方に変化は?
中田英寿(以下、中田):若い頃は自分に自信もなく、経験もなかったから洋服も時計やジュエリーも、どれをどういう風に着ればかっこよく見えるのか、自分らしく見えるのか分からなくてどうしてもブランドに頼ってしまうことが多かった。でも今は、どこのブランドかわかるような服を着ることは少ないです。素材の良いものは見た目が上品ですし、ちょっと面白い格好をしたい時は変わった素材の使い方をしているものとか、デザインよりも素材感とサイズ感で選ぶことが多くなりました。洋服もたくさん買って着ることを繰り返せば自分に合うモノが見えてきますし、自分に合うスタイルも見えてくると思います。
WWD:どのような経験を積む中で変化してきたか?
中田:身に着けるものは、まずはどれだけ着たかだと思います。料理もそうですし、ワインや日本酒もですが、やはり食べた量と飲んだ量には敵いません。経験はたくさん必要ですが、ただ経験をして消化していくだけじゃなく洋服も、ディテールやパターンなどを考えながら一つ一つ吟味していくことが大事だと思います。日本人はこれだけお米を食べますけど、米の品種を知っている人はあまり多くない。それを毎日の作業の一部と捉えるのか、1つのディテールとして考えるのか、その差ではないでしょうか。僕はディテールが好きなので、デザインに関してもこういう時には合いそうだけどこういう時には違うなとか、考えるようにしています。
WWD:普段時計を着ける時はどんな時?
中田:時計やジュエリーは結構難しくて、それを洋服の一部として考えるのか、自分の肌の一部として考えるのかの違いじゃないでしょうか。洋服の一部の場合は、TPOによって分かれますし、肌の一部の場合は着けている時間が長くなるので、TPO以上に自分にとって心地良いもの。僕にとって心地良いものは、洋服の選び方が変わってきたように、今は派手なものよりも細かいディテールでシンプルなモノですね。
WWD:今日の時計も自分で選んだと聞いたが。
中田:基本なんでも自分で選びますから(笑)。もちろん、こうしてほしいと要望はありますし、撮影の時でも「これ着てください」と言われることもありますが、基本的には自分に合うモノを自分で選ぶようにしています。
WWD:ファッションとしての時計の重要性は?
中田:僕はファッションや自分の身に着けるモノは人生の一部だと考えています。「洋服のデザインはしないんですか?」って聞かれることもありますが、好き過ぎてしたいとは思いません。でもそれぐらい自分の中では、すごく重要なこと。今回の「ダニエル・ウェリントン」もデザインが好きでした。ブランドも少しずつ変化していくと思いますけど、アイデンティティーは変わりませんし、そこが合うなと思っています。
WWD:ブランドのアンバサダーとしてやってみたいことは?
中田:本国に行って社長(フィリップ・タイサンダー社長)に会ってみたいですね。スウェーデンも好きなので。旅をしてそういうブランドを立ち上げるエピソードにも興味があります。元々、北欧は日本の文化と似ていますから、考え方も似ているんだと思います。
WWD:大切にしている時間は?
中田:お風呂で漫画を読んでいる時間が自分の中で一番落ち着く幸せの時間で、できる限り大切にしています。
WWD:海外から見た日本をどう思うか?
中田:日本はファッションだけじゃなくて色々なものが文化として入ってきて、それを受け入れる土壌もあります。それを自分たちの独自の形で出すのは得意ですが、それと同時に海外のものと王道で戦うっていうのは苦手な気がします。ですがそれも少しずつ、特に食はきちんと世界で認められ始めていると思います。
WWD:今一番興味あることは?
中田:興味あることは今自分がやっていること。日本の文化に一番興味があって、すぐに理解できるものでもないので、調べれば調べるほど興味も出てきました。最終的には世界の文化について何かしたいと思っているのですが、海外の文化を知るためには自国の文化を分からないといけませんし、逆に自国の文化を理解するためには海外の文化を分からなければいけません。僕は結局好きなことしかしないので、それにできる限り共感できる人と楽しみたいと思っています。