今年は出版社を超えたコンテンツ提供ビジネスのローンチが目立つ。ハースト婦人画報社は7月3日、出版社7社とともにNTTドコモが運営する「dグルメ」内で特設コンテンツ「マガジンチャンネル」の配信をスタートした。レストラン記事からレシピ動画まで、毎月約20本の記事を提供する。コンテンツを提携するのは「暮らし上手」「ディスカバー・ジャパン(Discover Japan)」(エイ出版社)や「おとなの週末」(講談社ビーシー)、「クラッシィ(CLASSY.)」「ヴェリィ(VERY)」(光文社)、「ウオモ(UOMO)」(集英社)、「サイタ(saita)」(セブン&アイ出版)、「東京カレンダー」(東京カレンダー)、「ヴァンサンカン(25ans)」「婦人画報」「ハーパーズバザー(Harper’s BAZAAR)」(ハースト婦人画報社)、「エッセ(ESSE)」(扶桑社)など26媒体。 ハースト婦人画報社は2016年12月から「dグルメ」に記事提供を行ってきたが、新たに7社を加えて出版社を超えたコンテンツ提供が実現した。
これに先立って、講談社とデジタルガレージの合弁会社DKMediaも新キュレーションメディア「ホリックス(HOLICS)」をローンチ。「ホリックス」では協力する出版社が持つコンテンツを個人の興味に合わせた最適な形で再編・配信する。まずは講談社の「ヴィヴィ(ViVi)」や「ウィズ(with)」「ヴォーチェ(VOCE)」「フラウ(Frau)」「おとなスタイル」の女性誌5誌が参加するが、今後はプラットフォームとして他社媒体のコンテンツも扱うという。
集英社やハースト婦人画報社など国内の出版社24社が電通、配信サービス会社の富士山マガジンサービスと組んで、中国語圏での雑誌コンテンツのデジタル配信もスタートしたばかりだ。すでにあるコンテンツを異なる別の切り口でまとめるという意味では、これも広義のキュレーション事業と呼べるかもしれない。
キュレーション事業への関心の高まりという点で、起点となったのは昨年末の「メリー(MERY)」閉鎖騒動だろう。転載元が不明瞭な記事の大量作成をはじめ、会社の運営体制に問題があるとしてDeNAは子会社ペロリが運営する「メリー」を含む全メディアを全て非公開とした。しかし、今年に入ってDeNAが小学館とデジタルメディアの共同運営を見据えた業務提携を発表。詳細は明かされていないが、「メリー」復活へ向けた布石とも考えられる動向に、大きな注目が集まっている。
こうした動きに合わせるように、正しいコンテンツを扱う信頼度の高いキュレーションメディアについて、出版社が本気で模索する時期が来たのだろうか。もしくは、デジタルメディアの発展によってコンテンツの自社発信だけでは制作コストと収益の採算が合わなくなって来たのかもしれない。いずれにせよ、会社を超えたコンテンツの提携が進むことで、近いうちに新しいキュレーション事業のあり方が生まれる可能性は高そうだ。