7月1~5日までパリ・オートクチュール・コレクションが開催されていました。“オートクチュール”と聞くと、自分とは関係のない話、そもそも“オートクチュール”って?という人も少なくないでしょう。自分のためだけにあつらえた服、オート(HAUTE)=「高い」、クチュール(COUTURE)=「仕立服」のことです。世の中の超VIPの富裕層の人たちは、ショーのルックを見て「これを着たいわ!」と思えば、自分のサイズにぴったりと合ったドレスを作ってもらうのです。
それには採寸、仮縫い、本縫いなどを含め、完成までに最低3回はメゾンに足を運ぶのだそう。日本の顧客もいるので、その方たちはフィッティングのために毎回パリへ赴くのです(しかもファーストクラスで!)。1つのドレスに合計どれだけのお金をかけているのだろうと、ついつい品のないことを考えてしまいます(笑)。日本にもそのような富裕層はいるのですね。近年では中国人のVIPがぐっと増えてきているように感じます。メゾン側もパーティーや食事会で最上級のおもてなしをしたりして、それはそれは華やかな夜を過ごしているそうです(実際に行ったことはないので、こんな口調です(笑))。
そんなオートクチュール・メゾンの最高峰の一つが「ディオール(DIOR)」です。その「ディオール」が現在、パリ装飾芸術美術館で創業70周年の回顧展を開催しています。私も実際に見に行ってきました。300点以上のドレスは圧巻です!創業者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)から、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、マルク・ボアン(Marc Bohan)、ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferre)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、ラフ・シモンズ(Raf Simons)から現在のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri))まで、デザイナー別、テーマ別、さまざま切り口で紹介されています。
それらのコレクションはどれも素晴らしいものですが、私が印象的だったのは真っ白の部屋です。天井の高さまで、白いトルソーに仮縫いの型が整然と並んでいます。オープン前日の7月3日に開催されたパーティーでは、その部屋で真っ白な白衣を着たクチュリエのスタッフが実際に生地を裁断したり、縫製したりしている様子を見せていました。
その方たちによると、毎シーズン、顧客の方のサイズを測り直し、ボディーを作り直しているそうです!半年でも体形は変わるからとのこと。それを聞いて、オートクチュールでは、ミリ単位、いや、それよりももっと繊細で緻密な世界でのモノ作りがなされているのだと実感しました。
また、もう一つ印象的だったのは、「ディオール」にインスパイアされて作られたブランドの服が展示されてあったことです。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ランバン(LANVIN)」「トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE.NEW YORK)」といった、そうそうたるブランドのルックが並んでいました。
それらのブランドが「ディオール」というブランドやその歴史に対して敬意を表しているのが分かります。このようなことは滅多にないことです。「ファッションへの愛」がその空間に流れているような感じがして、なんだかウルウルしてしまいました。来年の1月7日まで開催しているので、パリに行かれる予定のある方はぜひ足を運んでみてください!