ファッションおよびそれを取り巻く業界からは、毎年、新しい言葉が生まれています。例えば「クロスボディ」という言葉。みなさん、わかりますか?ストラップを肩から体を交差するようにかけるバッグのことです。ストラップが体(ボディ)を交差(クロス)するから、「クロスボディ」というワケです。
この言葉はだいぶ定着してきましたが、僕が「WWDジャパン」の記者として働き始めた十数年前には、「クロスボディ」なんて言葉は存在していませんでした。当時使っていた言葉は、「ナナメ掛け」もしくは「襷(たすき)掛け」。正直、いずれもイケてる言葉ではないから、「クロスボディ」という言葉が誕生し、定着したのでしょうね。
というように、やっぱりカッコよくあるべきファッション業界では、イケてない言葉が続々オシャレキーワードに変身するんです。ハトメは「アイレット」、肩出しは「オフショルダー」、アクリル樹脂は「サファイアクリスタル」、ゴムっぽい素材は「ラテックス」……。余談ですが、「自由気ままにファッションを楽しむ」とか「楽しみ方を着る人に委ねる」という意味の「スポンテニアス」という言葉は、自分が発信源になったと勝手に自負しております(笑)。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」で耳にした言葉を紙面とウェブで使い続けて苦節数年ーー。最初は、編集部員からも「わからない」と言われた言葉が東京ガールズコレクションのファッション&ビューティトレンドとしてキーワードになった時の感動と言ったら!やっぱり言葉って面白いなぁ、日々、そんな風に思っています。
そんな中、最近、浸透しそうな2つの言葉を頻繁に耳にしているので、今日はそんなお話。
最近、「トラックスーツ」と「フリーフロー」という2つの言葉が気になります。いずれもとびきり新しい単語ではありませんが、最近、触れる機会が増えているんです。
「トラックスーツ」は、2018年春夏メンズのトレンドにもなった、簡単に言えばジャージーの上下です。ジャージーっていうとダサいけれど、「トラックスーツ」だとなんだか印象が違いますね。陸上競技のトラックで着る、スーツのような上下だから「トラックスーツ」です。
そしてもう一つは、「フリーフロー」。ウェブで検索すると、5、6年前に誕生した言葉のようですが、最近、急速に目にしたり、耳にしたりする機会が増えました。これは、シャンパンやスパークリングワインの飲み放題のこと。やっぱり「飲み放題」より数倍イケてます。タダ(フリー)で、湧き出る(フロー)ように注いでくれるから、「フリーフロー」なんですね。いや、実際はお金を払っているからタダじゃないんですが(笑)。
ファッション業界人には、スパークリングワインを「シュワシュワ」とか「泡」と呼んで、愛してやまない人達が多数存在します。「フリーフロー」という言葉、そんな人たちから徐々にしみ出しています。ちなみにコレ、完全な和製英語です。
こうしたファッション業界で耳にするようになってきた言葉は正直、時に、わかりにくさの原因になっている気もするし、「日本人なら、日本語を使おうよ!」と思うこともしばしばですが、「やっぱり、ちょっとオシャレかも?」と感じるのも事実です。さぁ、「トラックスーツ」と「フリーフロー」は、どこまで一般に浸透するでしょう?注目したいと思います。