「ナイキ(NIKE)」が9月2日、グライムMCのスケプタ(Skepta)とコラボした“エア マックス 97 SK(AIR MAX 97 SK)”を発売する。が、正直「グライムって何?」「スケプタって誰?」という声が多く、一部のコアなファンにしか響かないニュースだと思う。しかし、個人的には非常にうれしいニュースであり、今回は商品説明に加えて、グライムやスケプタについてさらっとではあるが紹介したい。
グライムのジャンルを確立したといわれるディジー・ラスカルのデビューアルバム「Boy in da Corner」収録曲「I Luv U」
グライムとは、2000年代のイギリスのアンダーグラウンドやクラブカルチャーで産声をあげた、まだまだ歴史の浅い音楽のジャンルだ。ビートの速い音楽にラップを乗せ、アーティストのファッションがヒップホップのそれと似ていることから、しばしばヒップホップの一種と誤解されるが、ジャンル的にはハウスミュージックとされる。楽曲の多くが厳しい環境で育ったMCたちの暴力やドラッグなど“リアル”をテーマとした攻撃的なものゆえ、メジャーの土俵にはなかなか立てず、残念ながら偏向したイメージで捉えられることも。しかしながら、その“リアル”な楽曲とライブの一体感に魅せられる者が増え続け、グライムは若者を中心に世界的に注目を集めている。
スケプタの代表曲「Shutdown」。ユーチューブでの再生回数は3000万回を超えている
そんなグライムを牽引する存在が、スケプタだ。ナイジェリアにルーツを持つイギリス人で、今年で34歳。元々はDJとして活動を始めていたものの、自身でグライム・クルー、ボーイ ベター ノウ(Boy Better Know)を結成。07年に自主制作アルバム「Greatest Hits」でデビューすると、11年に3作目の「Doin’ It Again」収録曲「Rescue Me」が全英チャート14位となり、昨年にはあのドレイク(Drake)がボーイ ベター ノウに加入。今年になってからはファッションブランド「メインズ(MAINS)」を立ち上げ、自身のインスタグラムにコラボを示唆するかのようにミック・ジャガー(Mick Jagger)とスタジオで話す写真を投稿するなど、話題に事欠かない存在だ。
「マーキュリー賞」の受賞の瞬間
そうした渦中にある中リリースした最新作「Konnichiwa」は昨年、イギリスで毎年最も優れたアルバムに対して送られる「マーキュリー賞」を受賞。急逝したデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の遺作「★」や5年ぶりにアルバム「A Moon Shaped Pool」を発表したレディオヘッド(Radiohead)らを抑え、グライムMCとしてはディジー・ラスカル(Dizzee Rascal)以来、13年ぶりの受賞という快挙を成し遂げた。
グライム・ラッパーのストームジーが2015年に発表した楽曲「SHUT UP」。こちらはユーチューブでの再生回数が6000万回を超えている
また、自らを“グライムの子”と呼ぶ24歳のグライム・ラッパーの新星、ストームジー(STORMZY)も3月に発表したデビュー・アルバム「Gang Signs & Prayer」で全英アルバム・チャートで初登場1位を獲得するなど、グライムは一時代を築いているヒップホップの次に来るとまでいわれている見逃せないジャンルなのだ。
余談ではあるが、7月に亡くなったチェスター・ベニントン(Chester Bennington)率いるリンキンパーク(LINKIN PARK)も、5月にリリースした最新作「One More Light」の収録曲「Good Goodbye」で、ラッパーのプシャ・T(Pusha T)とともにストームジーとコラボしている。