ファッション、ビューティ業界でもCSRの一環として、チャリティー活動は多く行われているが、その目的や意義の基本は「人のために」だ。ヘアサロン「ラッシェル(RUSHELL)」のチャリティーカット活動にも、「世界中の貧困に苦しむ子どもたちに自分たちができることを」という思いが込められている。「ラッシェル」の活動は今年15年目。「長く継続すること」が、チャリティーで最も大切なことであり、最も難しい。
「ラッシェル」の活動の原点は、日向鈴子・ラッシェル会長と日向悦子・ラッシェル社長らが15年前、NPO法人アジアチャイルドサポートの池間哲郎・代表の講演会に出席したことに始まる。「そこで聞いたのが、食べるものも少なく、飲み水も不衛生で、大きくなれない子どもたちが多く存在すること。その子どもたちの夢が、『大きくなること』では悲しすぎる。そのことを知ってしまった以上、責任があると感じた」と振り返る。そしてそのころ同時に、サロンスタッフからチャリティー活動をやりたいという要望が上がる。「だからといって、すんなり始められたわけではなかった。日向会長が、かなり渋って……。チャリティーは、生半可な気持ちで始めるものではない。続けていくにはエネルギーがいる。本当に続けていけるのか、というのが会長の言葉だった」。それでも、スタッフらは「やりたい」と変わらない思いがあり、自分たちができること、チャリティーカットがスタートした。
チャリティーカットは、年に1度、「ラッシェル アンジュ(ANGE)」「ラッシェル プレジール(PLAISIR)」の各店舗で開催される。今年は8月22日に開催し、思いを同じくするヘアサロン「ココチ(COCOCHI)」も加わり、約100人が来店した。「カットをして世界のお友達の力になろう」を合言葉に、1回500円以上の募金をお願いする。「スタッフには休日を“募金”してもらい、会社側は備品や場所、その他の経費を“募金”する。利益にならないところで尽くすというのはエネルギーがいる」と語る。それでも続ける意味は「相手がいることだから。チャリティーに参加してくれた子どもたちが、また来たい、楽しみにしてくれていると思ったら、続けないといけない。恵まれない子どもたちに対しても、途中で投げ出すわけにはいかない」と居ずまいを正す。15年間で延べ人数約3000人がチャリティーに参加、約167万円が集まり、アジアチャイルドサポートを通じてミャンマーなどアジア地域を中心に寄付。これまで2基の井戸が作られた。また、チャリティーカットに参加した子どもたちが大きくなり、チャリティーカットを手伝ったり、活動に参加したりということも増えているという。
「来てくれた子どもたちが、スタッフや親御さんからその趣旨を説明されることで、自分とまったく違う環境に置かれている同世代の存在を知るきっかけになれば。一方で、髪を切る楽しさにも触れ、もしかしたら将来、美容師になりたいと思ってもらえたらうれしい。スタッフを含めたわれわれにとっても、この活動を通じて今の日常が当たり前の日々と思わずに、環境にもっと感謝をするという気持ちに立ち戻るきっかけになれば。また、美容師を志した原点に立ち返ってもらえたら」と願いを込める。
同社は年4回、児童擁護施設でのボランティアカットも続けている。「クリスマスには子どもたちにお菓子を差し入れたりしている」とのことで、ヘアサロンの枠を越えた、人の温かさが染みる活動だ。今後も、「少しでも長く寄付を継続していくためにも、チャリティーカットを続けていきたいが、参加してくれるお客さまが年々減っているのが現状。今後続けていく上で、ヘアサロンの有料職場体験などの実施も考えている」と、チャリティーで最も大切な「継続」を見据えている。