ファッション

故ピエール・ベルジェの集大成 イヴ・サンローラン美術館の全貌公開

 ピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団(THE FONDATION PIERRE BERGE-YVES SAINT LAURENT)は9月28日、パリのイヴ・サンローラン美術館を初公開した。美術館は、かつてはデザイナー、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)のクチュールハウスで、現在は財団本部となっているパリ・マルソー通りにある建物に入る。一般公開は10月3日で、サンローランのデザインスタジオは初公開となる。

 イヴ・サンローラン美術館の開館計画は、サンローランの生涯のパートナー、ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)が同財団を立ち上げた2004年当時からスタート。ベルジェは「2002年にイヴ・サンローランが引退した時に、思い出をプロジェクトの形にしようと決めた」と語り、自身のライフワークの締めくくりとして同プロジェクトを精力的に進めていたが、長い闘病の末、9月8日に86歳で亡くなった。美術館開館目前の死だった。

 開会式にはフランソワーズ・ニセン(Francoise Nyssen)文化大臣やベルジェの伴侶で財団のプレジデントに就任したマディソン・コックス(Madison Cox)らが登壇した。コックス=プレジデントは「開館を喜ばしく思う。特に、若い世代に見てもらえることがうれしい。ベルジェはこの素晴らしいアーカイブの保護と共有に強くこだわった。われわれはその遺志を守っていく」と発表した。

 インテリアデザイナーのジャック・グレンジ(Jacques Grange)が装飾を手掛けたエントランス部分には、サンローランの歴史を映す白黒写真が時系列順に並べられ、エントランスの向かいにはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)がサンローランを描いた4点の肖像画が飾られる。また、第1展示室にはサンローランのマスキュリン・フェミニンスタイルを象徴する「スモーキング」スタイルのタキシードやトレンチコート、サファリジャケットが飾られ、第2展示室ではサンローランのコレクションを1年ごとに入れ替えて展示する。初年度は1962年のデビューコレクションから2シーズン分のコレクションをミックスさせたルックを展示する。

 また、館内には映写室が設けられ、サンローランとベルジェの関係を掘り下げる映像を流す。映写室を出て上のフロアにつながる廊下には、初公開となるギリシャ・ローマ時代から1940年代のファッション史を反映したサンローランのデザインが並ぶ。

 館内で一番の目玉は初公開となるサンローランのデザインスタジオだ。まるでサンローランがつい先ほどまで作業をしていたかのような状況を忠実に再現した。オリヴィエ・フラヴィアーノ(Olivier Flaviano)=パリ イヴ・サンローラン美術館ディレクターは「可能な限り忠実に、当時を再現した」と説明。「リアルさを出すために、昔のアシスタントたちにも監修してもらい、物を置く場所にこだわった。彼らはとても真摯に取り組み、私物まで持ち込んでくれた」と解説した。

 その他にも、財団が収録した、サンローランと働いたスタッフ15人のインタビュー映像を別室で上映する。

 なお、同財団は10月19日にモロッコ・マラケシュにもイヴ・サンローラン美術館を開館する。サンローランとベルジェの2人が80年に購入・保護し、現在では年間80万人が訪れる観光スポットとなっているマジョレル庭園に隣接する同館は、約4000平方メートルの敷地に展示スペースの他にリサーチライブラリーや売店、テラス付きのカフェ、講演会やコンサート、上映会が開催できるホールを併設する。

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