日本全国に「ファッションセンターしまむら」を1378店舗、グループで国内2036店舗、中国・台湾で54店舗(店舗数は2017年8月末現在)を展開するしまむらが、ついに“EC”に着手する。来店客が欲しい商品を店舗で見つけられない場合、倉庫や他店舗、あるいはメーカーなどから商品を取り寄せる“客注システム”を活用するものというものだ。
現状の客注の課題は、取り寄せを承った店舗では問い合わせや荷受け作業が発生し、在庫があった店舗では問い合わせ対応や、商品を探して梱包・発送をするなど、時間も作業量も負荷がかかってしまう点だった。商品も一度陳列されており、全くの新品というわけにはいかない。
そこで、第1段階として、「客注品をサプライヤーから直接納品してもらい、店受け取りできるようにシステムを変更していく」と野中正人・社長。第2段階では、「お客さまのスマホやPCに商品情報を送り、予約してもらったものを店頭で決済と受け取りができるように、客注システムをeコマースに近い形に高める形で、プログラム開発とシステム開発をしていきたい」という。
野中社長は「ECと呼ぶのはおこがましい。疑似ECだ」と自虐するが、確かに、年商は6000億円近いものの、実はカード決済や電子決済は緒についたばかり。しかも、商品が低単価で、配送費用が高まる市況にあって、自社ECに乗り出すには「ハードルが高い」のが現状だ。まずは店や自宅など好きな場所で商品を選び、注文し、店舗で決済・受け取りする“クリック&モルタル型”の仕組みを作り上げるというのが、一番摩擦係数が少ない。もともと、店頭での買い物の楽しさを提供し、ついで買いもしてもらえるようにと、とにかく来店客数増に力を入れてきたしまむらの営業施策とも合致する。「今年、客注システムを刷新し、来年には使い勝手を高めていく」。
実は、9月の1カ月間だけでも客注件数は15万件を超えており、1店舗平均で約110件、1日平均でも3~4件に対応していることになる。金額も概算で1億3000万円(しまむらの1点単価867円に15万件を掛けたもの)以上あると見られる。知名度も高く、サービスを本格化すれば、成長ポテンシャルはかなり大きい。
一方、上海では8月に試験的にEC事業をスタートしている。「単純に店を(他社モールに)出しているだけ。大きなシステム投資をしているわけではない。中国のeコマースは(規模や影響力が)大きい。認知度を向上し、既存店の売り上げ向上を図るのが狙いだ」と野中社長。「もちろん、上海でうまくいけば、日本でも別の目線で急遽始めることがあるかもしれない」と含みを持たせる。いずれにしろ、しまむらの商品を“ポチる”(クリックする)日は近そうだ。