ファッション
2000号記念連載

「23歳の視点」を読んで思う40代の視点

 「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。

 「WWDジャパン」2000号で掲載した、セレクトショップという日本独自の新たな文化を生み出し、そしてファッションをけん引してきた、ビームス(BEAMS)の設楽洋・社長とユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS以下、UA)の重松理・名誉会長の対談では、印象深い言葉が多くありました。その一つは、重松名誉会長が「ファッションは死んでない」の根拠とした「人には肉体があって、人には欲があるから。欲がないと感動なんかしない」という言葉。そして「今後、業界やセレクトショップがどうあるべきか」という問いに、設楽社長が発した「多くの企業がAI(人工知能)を導入し、正しい判断をAIに委ねる時代になると、強い1社が勝つ時代になる。(自分自身は)AIのように正しい判断はしていない。ただおそらく温かい判断をしているだろう」という言葉でした。一見、交わらない意見のようでしたが、“欲”と“温かい”という目には見えない、でも人が心で感じることに大きな意味があるように思いました。もちろんデジタルやeコマース、AIなどをもっと駆使しなければならない時代に向かっているのは間違いないと思いますが、その中にいかに“心”を込められるかが重要なんでしょうね。

 一方ここで紹介したいのは、特集記事として掲載している「23歳の視点」です。2000号では特集を新卒の入社1、2年生が担当。彼らは自ら面白いと思った記事をピックアップし、その記事に対して感じることを「23歳の視点」として綴っています。ビームスやUA、その他セレクトショップの記事には「23歳の視点」が多く、若い人たちもまだまだセレクトショップに反応するんだなあと思ったのです。

 「ビームスが“米国50年代古着王”の新ショップをオープン」という1984年の記事に対し、「23歳の視点」は、「現在も古着ブーム(中略)。“品質は良いが、高いもの”というものを、一般的な消費者は現在求めていない印象を受ける」と書いています。40代になった筆者は、モノがあふれている現代社会はどちらかというと“高くても、品質は良いもの”なら生き残れると思っていたので、「やっぱり若い人の考えは、お金をかけてまで……」なのか、とちょっと首をかしげました。

 もう一つ、「BSUご三家は、なぜ売れるのか?」という94年の記事に対し、「23歳の視点」は「設楽社長が『紳士服で安売りは~』という言葉が印象的。(中略)セレクトショップは今では駅ビルやSCにも出店していて、安売り競争に参加しているように見える。(中略)当時のような、セレクトショップが良い意味でスノッブで、個性を競い合っていた時代が少しうらやましい」と語っています。この言葉からは、若い人たちは駅ビルやSCにしか足を運んでいないのかな、という印象を受けました。路面店ではそれぞれに違いがあると思うのですが……。

 2つの「23歳の視点」からは共に若い人の考え、行動範囲が分かります。若い人の言葉だからと片付けないで、これからの消費を担う人たちだと考えると、こういう意見は重要です。セレクトショップ以外にも、2000号ではさまざまな記事に「23歳の視点」が入っています。ぜひご一読いただき、今の若い人たちが何を思っているのか、感じていただけたらと思います。


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