ファッション

「サルヴァトーレ フェラガモ」の未来を担うポール・アンドリューのビジョン

 ポール・アンドリュー(Paul Andrew)は、2016年9月、「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO以下、フェラガモ)」初のウィメンズシューズ・デザインディレクターに就任し、その手腕を買われ、10月にはシューズのみならずウエアも監修するウィメンズコレクション・クリエイティブ・ディレクターに就任した。2018年プレ・スプリングの新作シューズのプレゼンテーションで来日したアンドリューに、これからの「フェラガモ」のビジョンついて尋ねた。

WWDジャパン(以下WWD):ウエアも監修することになり、率直な感想は?

ポール・アンドリュー=「サルヴァトーレ フェラガモ」ウィメンズコレクション・クリエイティブ・ディレクター(以下、アンドリュー):「フェラガモ家の皆さんが僕に信頼を置いてくれたからだと思うので、とても光栄で感謝している。すごくワクワクしているし、2月の発表に向けてすでに作業し始めている。これ以上はまだ言えないよ(笑)」。

WWD:「フェラガモ」では最初に何に取り組んだのか?

アンドリュー:過去のアーカイブを学ぶために1万5000個の靴箱を開けた。するとメゾンが花をいかに愛していたのかが分かり、これをインスピレーションの源にして、スプリングの全体のテーマにしようと思った。そこでロンドンに飛び、コベントガーデンのフラワーマーケットに行って、花を自分で撮影したんだ。これをプリントに採用している。チューリップなどの伝統的な花をグラフィックに表現した。

WWD:「フェラフガモ」で学んだなかで印象的なことは?

アンドリュー:「靴業界にいたらこの人と働きたい」と思うような有名な職人ばかりで、レザー、ヒールなど、それぞれの技術加工師と一緒に仕事ができたことが一番の学び。また、僕自身のブランドは規模が小さいため、「フェラガモ」のような大量生産のシステムには驚いた。

WWD:靴はどのような環境で作られているのか?近代的なのか、それともクラシックな工房のような場所なのか?

アンドリュー:フィレンツェに大きなスタジオがあり、デザインをしているスタジオの下にファクトリーがある。すぐに試作を作れる環境にあるのは驚異的だった。ヒール、木型のソール、革、鋳型の専門家ら、さまざまな靴のスペシャリストがいる。中には家族で何世代にもわたって勤めている人もいる。僕は全ての工程を並行してうまくまとめあげなくてはならない。インダストリアル、アルティザンシップとクラフツマンシップが完璧に融合し、オーガナイズされている。そのような環境で仕事をするのはエキサイティングで、僕の夢がかなったんだ。それが今の僕の仕事だなんて!

WWD:具体的にはどのようにデザイン面を進化させたのか?

アンドリュー:過去の作品を見ていると1920年代からずっと最高のクラフツマンシップを大切にしながら、同時にハイテクな技術を率先して採用していたことが分かった。1947年に開発した「F」ヒールは、筆記体のFが描く曲線的なラインを思わせるシェイプで、革で全部包んでいたが、今回は車の塗装業者に依頼し、メタリックに塗装してもらった。耐久性もあるしモダンになる。リボンシューズのリボンの大きさを少し大きくするなど、ヘリテージや歴史は引き継いでいるが、自分のモダンなツイストを加えフレッシュにアップデートしている。

WWD:そもそも靴のデザイナーを目指した理由は?

アンドリュー:父は英国ウィンザー城の家具の担当者だった。生地の張替えをしており、そのための工房が家の近くにあった。アルティザンや美しい生地、マテリアル、伝統的な工房を見て育ったんだ。一方、母はコンピューター会社の執行役員だった。職人になるのかテクノロジーの会社に行くのか迷ったが、建築家になりたいという答えが出た。でもそれからファッションに恋をしてしまい、建築とファッションへの愛、両親の影響を混ぜ合わせた結果が靴だった。なぜなら靴は建築の要素もあるから。あと、僕はすごくせっかちだから、建築より早く作れる靴は、僕にとって完璧な答えだった。英国レディング大学でプレタポルテの勉強をしてから靴の勉強をしたんだ。

WWD:「フェラガモ」の未来をどう描いていきたい?

アンドリュー:店舗ですでに飛ぶように売れている商品があり、それが励みになっている。もっとイノベーションを追求して、境界線を突破してよいのだと確信できた。常に革新的なデザインや作りにこだわってきた。「フェラガモ」のDNAはイノベーション。見た目の美しさのみならず、表に見えない木型、ヒールの中身、ディテールにも時間をかけてこだわっている。全てにおいて前に進んでいきたい。

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