「エブリン(EVELYN)」「アンミール(AN MILLE)」を展開するウェアデプトが好調だ。6年連続で売り上げは増加、2016年9月期と17年9月期は、それぞれ前期比24%増、27%増と2年連続で大幅増収だった。宣伝を一切行わず、EC化率も1割以下という、ガールズ系では異質のブランドはなぜ好調を維持できるのか。プレスとデザインを兼務する石田千尋ウェアデプト取締役(以下、石田)に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):「エブリン」と「アンミール」の現状は?
石田:「エブリン」がラフォーレ原宿とルミネエスト、渋谷109、名古屋近鉄パッセなどに7店舗、「アンミール」がルミネエスト、名古屋近鉄パッセ、大阪ヘップファイブに3店舗です。売上高は2010年に創業して、2年目以降は6年連続で増加しています。この2年はそれほど出店もしていないので基本的には既存店の増加が支えています。「エブリン」の価格帯は、トップスが3900〜5900円、ボトムスが4900〜5900円、アウターが7900〜1万3000円。高校生がちょっと背伸びして買える価格帯です。
WWD:ECは?
石田: EC化率は10%程度で、そこまで力を入れられていません。
WWD:では好調の理由は?
石田:基本的にすべてを内製化しているからだと思います。ODM(相手先ブランドの企画・生産)やOEM(相手先ブランドの生産)を行わず、デザインから生産までを自社で完結しています。物流に関しても倉庫を使っていません。商品はすべて渋谷区のオフィスにまず入荷されて、都内の店舗は専任スタッフが車で持っていっています。地方は宅急便ですね。自社でデザインから生産、発送まですべて完結しているので、店頭に並ぶまでは本当に早い。
WWD:生産のリードタイムは?
石田:サンプルが10日、量産で一週間です。なので店頭に並ぶまで最短二週間、バルクのオーダーでも1カ月程度です。EC化率が低いのも、店舗を優先して在庫を回せないからで、プロパーの消化率はかなり高い方だと思います。
WWD:一般的なガールズブランドと違い、ほとんど雑誌への出稿はしていない。ブランドの認知はどう高めているのか。
石田:ツイッターとリアル店舗です。「エブリン」のツイッターのフォロワーは現在約8万8000人。ツイッターが情報発信の要なので、投稿も店頭の販売員が行うなど、お客さまとの距離の近さを意識するようにしています。
WWD:「ポップティーン(POPTEEN)」の人気モデル前田希美とのコラボレーションなど、モデルやアイドルとのコラボも多いが。
石田:コラボは認知の拡大より、既存のお客さまへの満足度を高めるためです。コラボでツイッターのフォロワー数はそれほど増えません。社長の村中(功一)が元々、読モのプロデューサーだったこともあり、アイドルとのコラボが好きということも大きいです。
WWD:デザインのやり方は?
石田:デザインは現在、アパレル出身の小林千夏ディレクターと私の2人体制ですが、「エブリン」はもともとデザイナーの小林千夏・取締役が、当時自分の着たい服というコンセプトでスタートしたブランドで、小さいサイズのスイートな服でした。ただ店舗数の増加に伴い、スタンダードなサイズで、スイートで清楚とよりブランドの世界観に広がりを持たせています。小林ディレクターは服のデザインに加え、ブランディング全般と店舗内装、私はプレスとデザインを担当しています。
WWD:石田取締役はデザインにSNSを活用しているとか?
石田:私自身はアパレル経験がないので、ツイッターやインスタグラムで、『エブリン』のフォロワーやファンのSNSを辿って、彼女たちの好きなブランドや服を徹底的にチェックしています。
WWD:フォロワー数も多いので大変では?
石田:大変です(笑)。時間のあるときは常にインスタをチェックしています。でもファンの子たちのSNSを見ていると、好きなアイテムや彼女たちが欲しいものが見えてくる。先ほども言ったように当社はスピード生産が可能なので、売れ筋を見極めた上で生産に入れる。平均すると週4〜5型を常に店頭に入れているような感じです。小林ディレクターがブランドやシーズンのベースになるコンセプトを作ってくれるので、私はそうしたやり方に徹することができます。
WWD:自社で内製化しているので、忙しいのでは?
石田:うーん。私は夜8時には退社するようにしていますが、SNSを見ている時間も多いので実際に仕事をしている時間はそれ以上に長いかも(笑)。来年には春に店舗のリニューアル、その後にはECのリニューアルにも取り組み、ブランドのステージをもう一段上げようと考えています。