ユークス(YOOX)とネッタポルテ(NET-A-PORTER)が合併して2015年に誕生したのが、ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP 以下、YNAP)だ。ユークスの創業者でもあるフェデリコ・マルケッティ(Federico Marchetti)最高経営責任者(CEO)は2つの異なるファッションEC企業を統合し、17年1〜6月期は初めて半期売上高で10億ユーロ(約1320億円)を達成。20年まで2ケタ増成長を見込む。「ユークス」で買った「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のシャツと、「ミスターポーター(MR PORTER)」で買った「サンローラン(SAINT LAURENT)」のスーツと「ジョン・ロブ(JHON LOBB)」のシューズを着用するマルケッティCEOに、求める人材像とマネジメント術を聞いた。
米「WWD」(以下、WWD):自分をどのようなマネジャーだと捉えているか。
フェデリコ・マルケッティYNAP CEO(以下、マルケッティ):まず、私はマネジャーではない。起業家という方が正しい。マネジメントを行う際でも、起業家的であり、つまり、私はアイデアやビジョンよりも実行したかどうかで評価する。実行しなければ、何も改善されないからね。
WWD:採用の際に見るところは?
マルケッティ:決断力を見る。何も決めない人よりも、間違っても決断する人を求めている。とにかくスピードが重要だから。私は極端に効率的だし、非常にスピーディだ。
WWD:あなたは厳しい?
マルケッティ:正しい言葉ではないね。公平だとは思う。裏取引はしないし、直球型で、謎のヴェールにも包まれていない。関係が築けている相手に対しては、非常に良くするよ。17年一緒に働き続けている人がたくさんいる。最高執行責任者のアルベルト・ グリニョーロ(Alberto Grignolo)もリサーチ&デベロップメント ディレクターのガブリエレ・タッツァリ(Gabriele Tazzari)もそうだし、12年働いているアルバ・ダミコ(Alba D’Amico)=コーポレートブランド&デジタルコミュニケーション担当グローバルヘッドも何でも言い合える関係ができている。それをありがたく思う人もいれば、そうではない人もいる。学生時代、私は公平な先生が好きだった。まぁ、厳しいとも言えるかもしれないね。透明性が好きな人とはうまくいくね。スピードが命のビジネスで一瞬の遅れで大きなチャンスを失う世界だ。だから決断力があり、非常に速くて、実行できることがマストだ。
WWD:かつてはネッタポルテとの合併を夢見ていたが、今は何が目標か?
マルケッティ:人の話を続けるよ、それが達成したことの1つだから。まだ合併して20カ月余りだが、7月半ばに40人のマネジャーからなる社外ミーティングを行った。3分の1が旧ユークス グループからで、3分の1が旧ネッタポルテ、残りが新規雇用者で構成するドリームチームだ。そこで実感した。「うまくいった」と。最初はすごく大変だったがね。
WWD:最初は違った?
マルケッティ:合併する際には必ず皆、先々のことや仕事、給与についてなどが不安になる。しかし、解雇が伴わない合併は初めだったんじゃないかな。
WWD:合併後、辞めた人は何人?
マルケッティ:非常に小さいパーセンテージだった。オペレーションは難しく、イタリアとイギリスでクロスボーダーだった。私の仕事は2つの企業を一緒にして辻褄を合わせるのではなく、競合他社が2018年に持ち得ないプラットフォームとともに、新たな素晴らしい企業を作り出すことだった。客観的にみてすごく勇気のいることだったし、リスキーでもあった。私は1999年からリスクを取り続けてきたし、それを止めるつもりもない。想像してみたまえ。完璧なオペレーションと2つの補完しあえるビジネス、2人のリーダー、2つのビジネスライン。完全にラヴェンナのビザンチンモザイクだよ。それをいかに完成させるか。新しいプランと会社に皆が真剣に取り組む必要があった。
多くの変更があったが、私は2つのブランドのDNAを尊重した。ユークスはユークスであり続け、ネッタポルテはネッタポルテであり続けるように。私は邪魔しない。たくさんの人に「ネッタポルテに介入してれくれ」と言われたが、私は「その責任がある人に言ってくれ」と答えた。私はブランドとマネジャーの独立性を大事にしている。半年ごとに在庫を確認する会議を設けているが、最初チームは疑い深く、遠慮しがちだった。互いに下に見ている感じで、どちらにすう勢があるかをうかがっていた。私がユークスで過ごす日数を数えている人もいたよ。まぁ、人として普通のことかもしれないけどね。その後、計画が理解されて、ニュートラルな段階があったが、まだ情熱に欠けていた。
そして、7月中旬の社外ミーティングで、皆が情熱を持って一丸となっている様子を見て、2つの文化を融合するという私の仕事が完了したと実感した。これは私のキャリアの中で最大の成功だと思う。正直に言うと、どうしてそうなったのか自分でもよく分からないのだが(笑)。でも、実際に起こった。プレジデント インシーズンのアリソン・ローニス(Alison Loehnis)とアルベルト、そしてチームの皆のおかげで、私の功績は33%というところだ。2日間の社外ミーティングを終えた後、私は世界で一番幸せだったよ。
WWD:それで今の目標は?
マルケッティ:(しばらく考えて)消費者を見て、イノベートし続けることだ。イノベーションは常に課題だ。メインかどうかは分からないが、サービスにおいても商品においても常に課題だ。例えば、われわれはプライベートレーベル「ミスター ピー(MR P)」をローンチした。規模はまだ小さいがね。それから常に才能ある人、世界で一番優秀な人を探している。これは私の18年間でずっと優先してきたことで、これからも変わらないだろう。