ファッション

「アライア」回顧展がパリで開幕 死から2カ月、生涯の友人が次世代に伝えるクチュリエ精神

 2017年11月に死去したアズディン・アライア(Azzedine Alaia)の回顧展、「アズディン・アライア『私はクチュリエ』(Azzedine Alaia “Je suis Couturier”)」が1月22日に開幕した。場所はアライアの店舗兼アトリエで自宅だった、パリ・マレ地区のヴェルリ通り18番(18 rue de la Verrerie)。回顧展は6月10日まで。

 この回顧展の主催者は、アライアの生涯のパートナーで画家のクリストフ・フォン・ウェイエ(Christophe von Weyhe)とカルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)=ディエチ コルソコモ(10 CORSO COMO)創業者、そしてアズディン・アライア・アソシエーション(Azzedine Alaia Association)。開幕の前日、メゾン アライア(MAISON ALAIA)本社のキッチンではいつも通りシェフたちがランチを作り、ダイニングルームではウェイエとソッツァーニが翌日からの回顧展について話し、3匹の犬がその傍らで寝そべり、アライア本人がいつ現れてもおかしくない雰囲気だった。「私たちは本物の家族。アライアの遺産を残したいという全員の気持ちがより絆を強くしている。アライアは親しい友人たちがいつでもそばにいることを望んでいた。彼の望み通り、そこは何も変わらない」とソッツァーニは笑顔を見せた。

 回顧展では、1981年から現在までの作品40点以上が展示される。アライアが手掛けた最期のショーのラストルックでナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)が着用したシルバーのスタッズのブラックドレスをはじめ、90年春夏コレクションの白いストレッチレーヨンのストリップドレス、91年春夏コレクションのギリシャ風のミニドレスなど、ブランドのアイコニックな作品が並ぶ。それぞれのドレスはアルミニウムのハーフシェルに入れられ、ソフトな照明で包み込むように展示される。

 キュレーションを担当するオリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)「J.M. ウエストン(J.M. WESTON)」アーティスティック、イメージ&カルチャー・ディレクターは、元ガリエラ美術館ディレクターで、2013年に同美術館で開催されたアライアの回顧展にアライアと共に携わった人物。サイヤールはアライアの死の直後に回顧展の作品を集めるのはつらい仕事だったと明かしながらも、「アライアの時代を超越した作品のクオリティを伝えるため、白と黒のドレスに焦点を当てた。アライアの彫刻的なデザイン面を強調したかった。それぞれの真珠の玉にドレスが入った真珠のネックレスをイメージした。アライアの作品はシーズンに関係なく着用できると本人が語っていたことを考慮し、あえて年代順に展示しなかった」と説明した。

 ソッツァーニが2007年にファッションと建築、芸術、写真の橋渡しを目指して立ち上げたアズディン・アライア・アソシエーションは、アズディン・アライア・ファウンデーション(Azzedine Alaia Foundation)と改名され、今後はアライアの膨大な作品を所蔵し展示していく。18年は建築、芸術、写真をフィーチャーした3つの展覧会の開催を計画中だという。

 同財団は、アライアのアーカイブをレピュブリック通り近くのより大きな貯蔵スペースに移動させる他、映画や本の製作、奨学金の提供、講義の開催などを行う。「アライアの夢は、財団を若者が学ぶことができる場所にすることだった。最終的にはアトリエを一般開放したい」とソッツァーニは語った。

 「アライア」のブランドの今後については、公式の後継者は立てず、アーカイブをもとにデザインチームが継続するという。「スターデザイナーはいない。誰もアライアにはなれない。だが、彼はシーズンやトレンドに従わずに独自に作品を作っていたため、メゾンには何世代にもわたって活用できる貴重な財産が多く残っている。アライアの作品は時代を超越しているが、その作品には強いイメージとシルエットが反映されている。見ればすぐにアライアの作品とわかるでだろう。アライアのDNAを変える必要はないし、誰も触れてはいけない、むしろ触れることさえできない」とソッツァーニは断言した。

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