三越伊勢丹や松屋、東武百貨店などが加盟するA・D・O(全日本デパートメントストアーズ開発機構)による「第2回ロールプレイング全国大会」が、1月30日に三越日本橋本店内の三越劇場で開催された。加盟する北海道から沖縄まで32社の百貨店から選出された25人が登壇し、日ごろ培ってきた接客技術を競った。ファッションから化粧品、食品まで各売り場の高いレベルのパフォーマンスが披露され、最優秀賞に三越日本橋本店の婦人服自主編集売り場「ミグジュアリー(MIXURY)」に勤務する石渡恵(いしわた・めぐみ)さんが選ばれた。
ベテランらしい安心感と説得力のある接客で、客の興味を喚起した石渡さん。わずか8分間の競技時間で、見る人の多くに「この人から買いたい」と思わせるパフォーマンスは圧巻だった。
授賞式では周囲への感謝の言葉を述べつつ、ロープレ大会への出場が「接客の奥深さや自分自身について考える機会になった」と感極まった表情で語ったのが印象的だった。
石渡さんは20数年にわたって勤務してきた三越千葉店が昨年3月に営業終了となったのを機に、配置転換で三越日本橋本店に異動した。「不安だけしかなかった」と当時を振り返る。三越日本橋本店は日本一といってよいほど富裕層の顧客が多い店舗であり、配属された「ミグジュアリー」は40~50代のエグゼクティブの女性を対象にしている。石渡さんは環境の違いに戸惑ったが、長年培ってきた接客が顧客を獲得するのに時間はかからなかった。売り場のスタッフの信頼を集め、ロープレ大会の三越日本橋本店代表に推された。
「接客のすばらしさ、お客さまとのふれあいを次の世代に少しでもつないでいきたい。また明日からがんばります」。20数年の販売経験はかけがえのない財産。今後は百貨店の接客の神髄を後輩たちに伝える。千葉店の閉店に揺れた1年前とは全く違う心持ちで、新たな使命に燃えている。