“直接自分の言葉で伝えることで、信頼関係を築くことができた”
「チャンスはすぐに頂けた。でも勝ち取るまでは大変なプロセスだった」。柴田麻衣子リステア(RESTIR)クリエイティブ・ディレクターは、各国のブランドやバイヤーからリステアのマイコとして広く知られている。ショップ名だけではなく名前までを語られる日本人バイヤーは極めて少ない。リステアは現在、商社を介さず、柴田クリエイティブ・ディレクターが直接ブランドと交渉して買い付けている。とはいえ、元々英語が堪能だったわけではない。高校と大学時代にそれぞれ1カ月程度英国での留学経験はあった。「お天気の話程度はできましたが」。ビジネスとして使えるレベルでは到底なかった。
柴田クリエイティブ・ディレクターは、2001年に「ルシェルブルー(LE CIEL BLEU)」名古屋店のオープニングスタッフとしてリステアに入社し、わずか2週間で神戸のリステアに配属される。02年にはVMD兼アシスタントバイヤーとしてバイイングトリップに出かけるようになる。「リステアも知られていなかったし、私も若かった。アジアの子ども扱いをされ、悔しい思いをしました」。当時は商社が買い付けのサポートを行っていた。「人が間に入ることで、ブランドとの距離が縮まらなかった。特にリステアを知らない方に私たちの考えや、なぜ買い付けたいかなどが正しく伝わらず、買い付けられなかった時は本当に悔しかった。人を介することで伝言ゲームになり誤解を生じたこともあった。生まれつきの負けず嫌い。自分の言葉で直接伝えたいと思い、毎日英語漬けの日々を送った」。ニュースはCNNを見て、一番の趣味である読書もすべて英語の本に切り替えた。海外の友人との交流も広げた。
ちょうどその頃、社の方針で商社を介さず買い付けを行なうことになった。「買い付け自体の英語は難しくない。でも、買わない理由やエクスクルーシブで扱いたい理由などをうまく説明できなかった」。仕事はもちろん、それ以外でも英語の本を読んだり、映画を見たりすることで、コンスタントに英語に触れる機会を積極的に取るようにしている。「英会話は筋トレと同じ。毎日コツコツ積み重ねることが大切。ショールームで話していて、笑いが取れた時は嬉しかった。一緒に大声で笑えるっていいですよね」。直接ブランド側の人と話すことで、信頼関係が生まれた。「真摯に話すことで、ブランド側だけではなく、海外のバイヤーともコネクションがグッと広がりました。人脈は大切です。言葉ができないと難しいことも多いですね」。