TSIホールディングス傘下の東京スタイルは、国内産地と協業した商品開発を本格化する。第1弾として「ナチュラルビューティー(NATURAL BEAUTY)」で山形県の米沢織を使った商品を3月9日から販売する。スタイリストでウェブ雑誌「ミモレ(MI-MOLLET)」編集長の大草直子氏が監修し、機屋や染色工場など地元企業の協力で作り上げた。TSIは今回の協業を機に、最新機械の導入による自社工場の改革にも乗り出す。
今回販売されるのは米沢織の生地を使った深みのある色合いのスカート(1万9000円)、キュプラで光沢感とハリ感を出した無地トップスとストライプスカートのセットアップ(2万9000円)、綿・麻によるジャカードチェックのトレンチコート(4万3000円)の3アイテム。米沢織は江戸時代から続く伝統産業で、自然の染料を用いた先染めのテキスタイルで知られる。「ナチュラルビューティー」では豊かな風合いや独特の光沢感を生かし、大人の女性のリアルクローズを提案する。
さまざまなブランドとのコラボで引っ張りだこの大草氏だが、米沢織の印象は鮮烈だったという。「私が手掛けたコラボはアイテムを決めて監修することがほとんどで、今回のように素材から入るのは初めての経験。たくさんの生地を手にして、また工場の現場を訪ねて職人さんの技術を見て、こんな宝物があったのかと驚いた」。
テキスタイルは伝統的な手法で作られているのに対し、縫製にはハイテクを用いる。旧東京スタイル時代から40年以上の婦人服を縫い続けるTSIソーイング米沢工場では昨年春、JUKIの最新鋭のコンピュータミシンを導入した。糸調子や縫い目の調整など仕様書に書かれている全データをコンピューター制御できるため、安定的に品質の高い縫製が可能になった。これまでは追加発注が入るたびに、生地やデザインに応じて人の手でミシンを微調整する手間がかかったが、コンピュータミシンと生産ラインの再編成で生産性の大幅に改善。工程が多い服も少ないスタッフで効率的に量産できるようになった。
同工場は市内に建設する新工場に今秋移転する。生産を管轄するTSI・プロダクション・ネットワークの井上隆亮・社長は「近い将来、IoT(モノのインターネット化)やAI(人工知能)を駆使した最新鋭のモノ作りの拠点にしたい」と話す。
一連の協業を主導する東京スタイルの久保田寛・社長は「今後はモノ作りの可視化がテーマになる」と予想する。「われわれも米沢織も優れた技術を持ちながら、それが消費者にあまり知られていない。自己満足で終わることなく、大草さんの力を借りて、お客さまに共感を広げるチャンスにしたい」。今回の反響を見ながら、他の産地との協業も模索していく。