アメリカ・ポートランド発クラフトフード専門店「ザ・メドウ(THE MEADOW)」のワークショップが、阿佐ヶ谷にある「オレンジページ(ORANGE PAGE)」の料理教室コトラボ(KOTOLABO)で2月7日に開催されました。
「ザ・メドウ」とは、米ポートランドとニューヨーク・マンハッタンのウエストビレッジにあるクラフトフード専門店で、オーナーのマーク・ビターマン(Mark Bitterman)が世界中を旅して集めた塩やチョコレートをはじめ、カクテルの材料のビターや花を販売しています。ニュウマン(NEWOMAN)新宿での日本初のポップアップショップ開催を機に、オーナーのマークが来日しました。クラフトフードとは、クラフトビール、クラフトバーガーなどと同様、“手作り”にこだわったフードのことで、日本でも大人気のニューヨーク発バーガー店「シェイク シャック(SHAKE SHACK)」が代表例です。
「ザ・メドウ」×「セルサルサーレ」の共演
ワークショップの会場にはいたるところに花が飾られ、「ザ・メドウ」で販売しているチョコレートやビター、マークの著書などが展示されたアットホームな雰囲気の中、イベントがスタートしました。ウエルカムドリンクはチョコレートをお湯で溶かしたシンプルなドリンキングチョコレート。カルダモンとオレンジのエッセンスを加えています。今回のワークショップは、恵比寿の人気店「セルサルサーレ(SEL SAL SALE)」の濱口昌大シェフによる「ザ・メドウ」の塩を使用した料理を、マークの解説とともに味わうというものです。「セルサルサーレ」とは、フランス語、スペイン語、イタリア語で塩を意味する単語をつなげたもの。塩をコンセプトにしたイタリアンで、食通にも大人気のレストランです。
マークの人生を変えたゲランドの塩
まず、マークが「ザ・メドウ」のコンセプトや誕生背景について話してくれました。マークは、「塩が私の人生を変えた。バイクでヨーロッパを旅した時に、フランスのトラックステーションのような場所でステーキをオーダーした。塩のクリスタルが肉汁の上にのっていて、嚙むたびに肉と塩が織りなすおいしさに天にも昇る思いだったよ。まさに、経験したことのない味だった。ブルターニュ地方のゲランドの塩で調理したと聞いて、そのままゲランドまでバイクを飛ばしたんだ」と言います。塩は化学工場で作られるものと思っていたマークは、ゲランドで塩作りが人の手で行われているのを目の当たりにします。「ゲランドでは昔と同じ製法で、海と太陽、そして人間の手により作られているんだ。このケルト海塩の起源は2000年以上の昔。道端で食べたステーキが私を紀元前に連れていってくれた」とマーク。この塩との出合いが「ザ・メドウ」の始まりで、それ以降もマークは世界中を旅し、さまざまな場所と人を通して「ザ・メドウ」のアイデアを得ています。販売している花もその一つ。マークは、「パリで花屋の上に住んでいたことがあるんだ。パリの人々は1週間に2~3回花を買う。毎日買う人もいるほどだ。アメリカではせいぜい1年に2~3回。パリのように花を毎日の生活に取り入れたいと思った」と話します。
塩と食材の奥深い関係
「ザ・メドウ」の塩を使って「セルサルサーレ」の濱口シェフの調理が始まりました。メニューは、レストランでもおなじみの真鯛のカッペリーニ、サワラの低温調理、ベーコンとマッシュポテト、フォアグラ、デザート。カッペリーニのタイのマリネにはスロベニア産のピラン塩、サワラにはゲランド産のフルール・ド・セル、ベーコンとマッシュポテトには竹炭の塩、フォワグラにはメキシコ産のサル・デ・グサーノ塩を使用します。塩ミルクのジェラートにはルビーソルトが使用されています。ピラン塩は伝統的な塩の作り手の少ないイタリアで使用される塩で、パルマ地方ではプロシュート作りに使われています。フルール・ド・セルとは、塩の精華という意味で、躍るような軽やかさが特徴。サル・デ・グサーノはアガぺという植物に生息する虫とスパイスを配合したもので、メキシコ・オアハカ州の伝統的な調味料として知られています。塩にこだわるお店だけあって、どの料理も絶品。素材と塩のマリアージュに舌鼓を打ちました。
料理を堪能した後には、6種類の塩のテイスティングがスタート。スモークしたものや竹炭のすだれで濃縮したものなど塩にもいろいろ個性があるのです。フルール・ド・セルは野菜やポークなどの料理に、ミネラルが豊富なハワイの塩はバターなどのこってりした料理に、スモークソルトはマッシュポテトやアイスクリームなどに合うそうです。私自身、伯方の塩、ゲランドの塩、トリュフソルトは常備し、料理によって使い分けていますが、まだまだ塩の初心者であることを実感しました。
マークは最後に、「日本人は好奇心旺盛で温かく、日本でポップアップを開催できたことを大変うれしく思う。日本にもゆくゆくショップを開き、バイクで日本中を回ってみたい」とにこやかに話しました。