プラダ グループ(PRADA GROUP)の17年12月期決算は、売上高が前期比3.6%減の30億5647万ユーロ(約4003億円)、純利益が同4.4%減の2億4892万ユーロ(約326億円)の減収減益となった。厳しい結果にもかかわらず、パトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)最高経営責任者(CEO)の18年の見通しは明るい。「17年下期に開始した新戦略が、グループ全体に早くも良い結果をもたらしている」と自信を見せる。
ブランド別では、「プラダ(PRADA)」が同2.1%減の24億6124万ユーロ(約3224億円)、「ミュウミュウ(MIU MIU)」が同10.9%減の4億5933万ユーロ(約601億円)だった。「ミュウミュウ」の苦戦は、「戦略的に12店を閉店したことと、90店の改装に伴う休業で影響を受けた」とベルテッリCEO。「チャーチ(CHURCH’S)」は同12%減の7099万ユーロ(約92億円)だった。
17年度は、改装やポップアップショップを実施して、店舗間のネットワークを強化することに力を入れたという。年間で140店の改装・移転を行い、75のポップアップショップを展開。デジタルマーケティングにより、ブランドの存在感が急速に高まったことが奏功した。「バッグやレザーグッズは、全てのプライスポイントで新型を増やしたことで、値下げなしで売れている。『プラダ(PRADA)』は主要地域で好調に転じた」と、ベルテッリCEO。「ポップアップストアでは年間を通してさまざまな挑戦を行ったが、それが非常に大きな成果をもたらし、既存店にもシナジーを生んでいる」と続ける。
ミレニアル世代の台頭などを背景に、ますます複雑になる市場に向けては、グループの“文化的遺産とアイコン的な価値”を活用していく方針だ。たとえば、「プラダ」ではブランドを象徴する黒いナイロン地を使った商品を企画した。そうした施策もあって、「18年は良いスタートを切った。今後も発展を続けていくための新しいページを開いたと自負している」とベルテッリCEO。実際、18年1~2月の売り上げは、現地通貨ベースで前年同期比7.5%増のペースで推移しているという。
17年度期末のグループ全体の直営店舗数は625。年間で25店を新規出店し、23店を閉めた。小売り部門の売上高は前期比7.8%減の24億4369万ユーロ(約3201億円)で、これは売り上げ全体の81%を占める。一方、卸部門の売上高は、「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」「マイテレサ(MYTHERESA.COM)」といったオンラインリテーラーの好調によって、同18%増の5億6458万ユーロ(約739億円)となった。キアラ・トサト(Chiara Tosato)=ゼネラルマネジャー兼デジタルディレクターによれば、「ECは直営と卸を合わせて今後も2ケタの伸びが見込める」という。
日本での売上高は同14.6%減の3億3681万ユーロ(約441億円)で、売り上げ全体の約11.1%を占めた。期初は特に苦戦したが、海外観光客の購買も追い風となり、期末にかけて盛り返した。
18年は、オムニチャネル化の促進にいっそう力を入れ、顧客一人一人の要望に寄り添っていく。マイクロソフト(MICROSOFT)と組んで開発中のビッグデータ解析プロジェクトも、年内に開始する予定だ。同プロジェクトによって、より深い顧客情報の取得とサービスのパーソナライズを進める。
直営と卸を合わせたECの売り上げ比率は、現状では売り上げ全体の4~5%。これを20年までに15%まで高める。「そのために、『Tモール』などのマーケットプレイス型サイトと手を組む可能性もある」とトサト=ディレクター。