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スタートトゥデイ21年目の大改革、子会社2トップが語る「ゾゾ」の第2ステージ

 ファッションECモール「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するスタートトゥデイが1日、子会社のスタートトゥデイ工務店(東京都渋谷区、久保田竜弥・社長)とVASILY(東京都渋谷区、金山裕樹・社長)、カラクル(福岡市中央区、大久保貴之・社長)の3社を統合し、スタートトゥデイテクノロジーズ(以下、STテクノロジーズ)を発足させた。社長には久保田竜弥スタートトゥデイ工務店社長が就任し、 金山裕樹VASILY社長がファッションメディア運営や新規事業担当として、チーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)に就任する。同社が目指す事業について久保田竜弥・社長と金山裕樹CIOの2トップを取材した。

WWD:まず、新会社設立の意図を教えてください。

金山裕樹スタートトゥデイテクノロジーズCIO(以下、金山):集約した3社はみな似た特徴を持っていて、ほとんどがエンジニアからなる会社でした。今後エンジニアリングで価値を作っていくと考えた時に、力を集約した方がいいのは当然です。集約することで人材や技術の交流もできますし、反対に3社がそれぞれ同じようなプロダクトを作っていては非効率的ですから。

WWD:新会社にはどれくらいの社員がいるのでしょうか。

金山:現在200人程度です。勤務地は青山と幕張、そして福岡にも10人程度の人材がいます。2018年4月入社の新卒社員も6人いて、今後も新卒採用には注力していきたいと思っています。

WWD:スタートトゥデイという会社との関係は?

久保田竜弥・社長(以下、久保田):スタートトゥデイに残っているのはマーケティング部門とカスタマー部門、フルフィルメント、管理、広報などで、それ以外の開発部分を全てSTテクノロジーズに集約したイメージです。

金山:これまでも傘下の3社で共同事業に取り組みことはよくありましたが、それだったら一緒になった方がいいと。実務面で何かが大きく変わったわけではないのですが、例えばアクセスできるデータだったり、そうした観点ではスムーズになりましたね。

WWD:あらためて、これまでの2人の業務内容を教えてください。

金山:僕は9年前にファッションアプリの「アイコン(iQON)」を作るためにVASILYを創業しました。アプリ運営をする中でデータの取り扱いやアルゴリズムの提供をやってきて、まさにここに未来があると感じ、14年頃から投資をはじめました。17年にスタートトゥデイ傘下に入りましたが、今は大量のデータを規則化することで人間の意思決定を代わりに機械ができるようにしたいと思っています。

WWD:具体的にはどういうことでしょうか。

金山:例えば「白いTシャツ」にしても「カットソー ホワイト」とか「Tシャツ 白」とか、会社によってカテゴライズ方法が違っていて、人間の目で見れば一緒なんですが、それを機械が仕分けするのは大変だったんです。そこに目を与えてあげるというか。これを応用すれば、デニムが欲しい時に「ゾゾタウン」の大量のデニムから一瞬にして目当てのデニムを探し出すというようなことも可能になります。もちろん選ぶことに価値を置く人もいるので、人の意思決定は絶対になくなりませんが、機械による意思決定も100%できるようになります。選ぶのが面倒だと考える人はお金を払って、選ぶ苦痛を感じてまで、似合っているのかどうか不安なまま着ている人もいるんですよね。「お任せ定期便」もこれを解決する1つだと思っています。

WWD:久保田社長はもともと「ウェア(WEAR)」を統括していましたよね。

久保田:僕は08年6月にスタートトゥデイに入社しました。入ったのがマザーズ上場直後だったんですが、まだシステム部には10人くらいしか人がおらず、2〜3年は物流の管理画面やフロントの改修をしていました。一方で「ゾゾピープル」(ブログのようなもので、すでにサービス終了)やショップ情報をまとめる「ゾゾナビ」の改修など、「ゾゾタウン」以外のメディアサービスを中心に担当してきました。そのうちに社内にあるデータの全容がわかるようになり、こんなにデータがあるならつなげる必要があるんじゃないかと考え始めました。そんなタイミングで前澤が突然やってきて、「ファッションデータベースを作りたいんだよね」と言われたんですね。今から5〜6年前ですが、今まさに実現しようとしている構想で、聞いた瞬間腰が砕ける程の衝撃を受けて(笑)。ぼくはファッションで一番重要なものってアイテムを選んだ後の最終的な“コーディネート”だと思っていて、着こなしでお洒落かどうかが決まると。だからこそ「着こなしのデータを集めなければいけない」と思い立ち、「ウェア」を始めました。ようやく着こなしデータも1000万枚近く集まったので、今こそこれを生かすタイミングなんだと思っています。

WWD:前澤社長には当時からデータ構想があったんですね。

久保田:前澤は「世界中で売られているアイテムのマスターデータは1個であるべきで、欲しい商品にひもづく情報は簡単に網羅して見られるべきだ」と考えています。アパレルって統一規格がないので、そんなものを作れるのはわれわれしかいないと。実際ローンチ時にウェアリスタ(公認ユーザー)や著名人の助けもあったためにファッションメディア要素が強くなってしまいましたが、それだけではなく、当初の想定では「ウェア」は一般ユーザーが材料を選べば調理方法がわかるというような、ファッション版「クックパッド」だったんです。そしてその先にあるのはカーナビのようなツールで、目的地を伝えれば顔や天気、体型などに合わせて最適な着こなしを提案してくれるようなイメージです。そのためには技術的なサポートが必要で、それを金山がやって、僕が実用化をする、という流れですね。

WWD:では、新会社での2人の役割を詳しく教えてもらえますか。

金山:僕の肩書きがCIOであるように、イノベーションが担当です。既存事業自体は成長していますが、その一方で新しいことを始めるのは簡単ではありません。「ゾゾタウン」以外の売り上げを作ること、次の「ゾゾタウン」を作ることが僕の仕事ですね。僕には今の「ゾゾタウン」の運用はできませんから(笑)。既存事業については社長の久保田が誰よりも詳しいですからね。

久保田:僕としてはもちろん既存事業の拡大もあるし、それをより早く達成するための組織作りや運営をしなければいけません。社内の要望も聞きながら新しい技術は金山に依頼をして、それらを「ゾゾタウン」に実装していく。僕は究極の“根回しおじさん”です(笑)。

WWD:研究分野という点では、「スタートトゥデイ研究所」は金山CIOの管轄ですか?

金山:僕はあくまで所長ではなくて、GM(ゼネラルマネジャー)というような立ち位置です。研究所には現在15人の所員がいますが、所長は研究者がやるべきだと思っていて。ただ研究するのではなく、学会での発表などもやっていきたいです。

WWD:こうして話を聞くと、20周年を経て第2ステージへの大改革が始まったという印象を受けます。

金山:全く同感ですね。前澤自身も「第2創業期だ」と言っています。

WWD:会社設立にあわせて、「天才募集」という人材募集がSNSやメディアで話題になりましたね。

金山:あれは現場から上がってきたアイデアだったんです。

久保田:新会社の発足にあたって、普通にしてもつまらないプレスリリースになってしまうし、何かキャッチーなものだったらバズるということを経験的に知っていたので。そしたら現場から「『7人の天才募集』ってどうですか」というメッセージがslackで飛んでたんです。それで、「もう1つ、『50人の〇〇』をどうしよう」みたいなやりとりをしていました。「『50人の変態』か!?」とか(笑)。そうしてデザインまで現場が考えて、前澤に見せたら何の直しもなく戻ってきて。たしか発表が月曜日で、ギリギリまで悩んで金曜日に出てきたアイデアだったんです。

WWD:前澤さんから修正が入らないのは珍しいんですか?

久保田:めちゃくちゃ珍しいですね。現場としては、前澤が考えそうなことを自分たちがやれたんだということで、バズった後、泣いて喜んでました(笑)。

WWD:実際の募集状況はいかがですか。

金山:もちろん反響もいいですし、採用したいと考えていたような方が応募してくれたのが何よりうれしいです。これまであまりテクノロジー分野の人材がいなかったので、ようやくテクノロジー会社だと認知され始めたんだなと。もちろん、募集自体はバズらせるために考えたんじゃなくて、1億円払ってでも天才が真に欲しいわけですよ。

WWD:発表前後では前澤社長はツイッターで公開質問をしたり、2人も巻き込んでツイッター上でアイデアを集めるような動きもあって、すごく今っぽいと感じます。

金山:大変ですけどね(笑)。でも楽しいし、SNSというこれだけ浸透している道具を社長が使いこなしているというのがしかるべき姿なんじゃないかと。

WWD:本当ですね。では、最後に、今後の意気込みを聞かせてください。

金山:スタートトゥデイがテクノロジーに対して本気だということは伝えたいですね。未来に向けて準備をしている中で、社長を含めて派手な部分も多いですが、ベースには淡々と積み上げる努力があって。継続して、浮かれずにやっていきたいと思います。

久保田:“70億人のファッションを技術の力で変えていく”というミッションを掲げている以上、ファッションの川上から川下までサポートしていきたいと思います。今はメディアやEC事業にとどまっていますが、IoTやリアル店舗での買い方改革、工場から綿の栽培まで、テクノロジーが入る隙間があるところ全てが事業対象なので、いろんなことを早く実現できるように愚直にやっていきたいですね。そのためにも“天才募集中”です(笑)。

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