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わずか6日でメジャーへの切符を掴んだLA発バンド、レイニー 「成功の秘訣は時代の流れに乗ること」

 近年、「サウンドクラウド(SoundCloud)」をはじめとしたウェブ上で人気に火がつき、脚光を浴びるアーティストは少なくない。アメリカ・ロサンゼルス発のバンド、レイニー(LANY)もそのうちの1組だ。フロントマンのポール ・クライン(Paul Klein)、シンセサイザーのレス・プリースト(Les Priest)、ドラムのジェイク・ゴス(Jake Goss)の3人からなるレイニーは、4年前に初めて制作した2曲を「サウンドクラウド」に公開したところ評判が評判を呼び、わずか6日で大手レコードレーベルの「ポリドール・レコード(Polydor Records)」との契約が決定。デビューアルバム「LANY」は全米ビルボード・チャートの新人アーティスト・チャートで1位を獲得するなど、一躍世界が注目するバンドとなった。

 楽曲の多くはロックバンドながら電子音を使用したポップなサウンドで、R&B要素を感じさせるものもあるなど幅が広い。日本でも昨年「サマーソニック2017(SUMMER SONIC 2017)」に初出演を果たし、同年11月に公開された「ティファニー(TIFFANY & CO.)」と結婚情報雑誌「ゼクシィ」によるショートフィルム「ティファニー・ブルー」のBGMに楽曲「Good Girls」が使用されるなど、注目度が急上昇。ポップなのに切なく、どこか懐かしさを覚えるサウンドとポールの儚げな歌声は、“セツナポップ”というワードを生み出した。

 日本初となる単独公演を行うために来日した彼らに、バンド結成やデビューまでの経緯、ファッション観などについてポールを中心に話を聞いた。

WWD:レイニー結成前、3人それぞれが別のバンドを組んでいたが、どうやって結成に至った?

ポール:もともとジェイクとレスの2人とは大学時代の友達でね。卒業後、僕はその場限りの寄せ集めバンドでライブ活動をずっとしていて、2人もそれぞれバンド活動をしていたんだ。それで、僕がなかなか売れなくて悩んでいたときに「一緒にやらない?」とジェイクに電話をしたら「もちろん!」という答えが返ってきて、そこからレイも加わって一緒に音楽を作るようになったんだ。2人の音楽はもちろん、音楽に対する姿勢がとても好きだったし、僕らはお互いにファン同士でもあった。いま思うと、結成は自然なことだったのかもしれないね。

WWD:曲を「サウンドクラウド」にアップしてから数日で複数のレコード会社からオファーが来たと聞いたが本当?信じられなくて(笑)。

ポール:本当さ!(笑)。その頃は音楽を制作することを3人でただ楽しんでいただけで、ひとまず「サウンドクラウド」に2曲だけアップしてみたんだ。そしたらアカウントのフォロワー数がゼロだったのに6日後には、「お前らは誰だ!?」「他に曲はあるのか?」って問い合わせメールが、大手レーベルから何通も届いたんだ。信じられなかったよ。でもその頃はまだ自分たちの音楽をビジネスにすることに興味がなくて、問い合わせをもらったレーベルの名前すら半分以上知らなかったんだ(笑)。

WWD:ヒップホップのジャンルでは「サウンドクラウド」出身が多いが、バンドでは珍しいと思う。

ポール:この質問は初めてされたよーーいい質問だね。これまで考えたことも意識したこともなかったけど、たぶんこうやって成功したのは僕たちが初めてのバンドじゃないかな。たしかにラッパーやヒップホップのアーティストは「サウンドクラウド」出身が多いと感じるけど、それは音楽のジャンルの問題だけじゃなくて、音源をアップした“時代”が影響していると思う。

レス:僕らは「サウンドクラウド」で見つけられたことがきっかけでデビューが決まったけど、いまはこの方法でデビューのチャンスを掴める人はほとんどいないと思う。だっていまじゃこれが普通で、ありふれているからね。

ジェイク:僕らをはじめアーティストをとりまく環境は常に変わっている。いま、当時と同じことをしてデビューしたいと考えるなら「サウンドクラウド」だけじゃなくて、あらゆるSNSやサービスに音楽をアップロードしないとチャンスを掴むのは難しくなっていると思うよ。

ポール:だからこそ僕らは、時代の流れとともにパフォーマンスの仕方や概念を常に変化させないといけないと考えているんだ。

WWD:全員が学校で音楽を学び、複数の楽器を演奏できることがレイニーの強みだとも感じる。

ポール:僕は5歳のときに母親に無理やりクラシックピアノを習わされたんだけど、本当に練習するのが嫌だったんだ(笑)。でも今となってはすごく感謝しているよ。レスはエンジニアーの経験がいまの音源制作に繋がっていると思う。「1万時間費やしたらプロフェッショナルになれる」っていう名言があって、僕たちもそれだけの時間は音楽につぎ込んできた。ピアノを無理強いされたことや、ちゃんと学校に行って複数の楽器を演奏できるようになったことで、いまのレイニーがあるね。

デビューアルバム「LANY」収録曲で代表曲の「Super Far」

WWD:デビューアルバム「LANY」の反響はどう?

ポール:細かい評判については聞かないようにしてるけど、世界中の多くのライブでチケットがソールドアウトしていたり、新しいファンの顔を見たりするたびに、好評なんだとは感じているよ。そういうことでしか自分たちがどう評価されているかわからないんだけどね、とにかくうれしいよ。

WWD:アルバムから特におすすめするとしたらどの1曲?

ポール:んー……難しいなぁ(笑)。自分たちを表現するのに最適な曲だと思うから「Super Far」かな。

レス:僕の好みもあるけどポールと同じで、バンドを紹介する意味で「Super Far」を聴いて欲しい。

ジェイク:しいて言えば「13」かな。

WWD:バンド名は“字面の見た目がいいから”と聞いたが、自身の格好で気をつけているところはある?

ポール:好きな音楽をやっているのと同じで、洋服も好きなものを選んで着ているね。周りの意見に左右されるんじゃなくて、気持ちが楽になったり自分らしいものを着たりするようにしているよ。今日はオーバーサイズのものを着ているけど、6カ月後はもしかしたらすごくタイトなTシャツを着ているかもしれないし、そのときの気分だね。時代の流れに合わせるよ(笑)。

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