アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が1969年に創刊した米カルチャー誌「インタビュー マガジン(Interview Magazine)」が休刊する。発行元のブラント パブリケーションズ(BRANT PUBLICATIONS)が休刊の事実を認め、2つのグループ会社とともに日本の破産法に相当する連邦倒産法第7章の適用を申請し、会社を清算することを明らかにした。
同社のスポークスマンは、「ブラント パブリケーションズは財務的損失を抱えており、貸し手からの借金で以前のローンの返済や事業運営を続けてきた。しかし債務は増えるばかりで、その改善は難しい。『インタビュー マガジン』の資産は法律に則り債権者に分配されるだろう」と話した。
エディトリアル・ディレクターを10年以上務めたが給料未払いを原因に4月で「インタビュー マガジン」を去ったファビアン・バロン(Fabien Baron)は、「創刊以来カルチャーのアイコンであり続けてきた『インタビュー マガジン』の休刊というあまりに突然のニュースに驚いている。継続のための選択肢もあっただろうから、なおさら残念だ。同誌が芸術面で成功してきたのは、有能な寄稿者の功績によるもの。彼らの多くは現在、債権者になっている。オーナーのせいだ」と語った。
バロン前エディトリアル・ディレクターとその妻でスタイリストのルディヴィーン・ポワブラン(Ludivine Poiblanc)は、60万ドル(約6600万円)以上にもおよぶ未払い金を巡って5月初旬にブラント パブリケーションズを訴えている。さらに、著名スタイリストのカール・テンプラー(Karl Templer)前クリエイティブ・ディレクターが4月に同誌を離れたのは、彼が少なくとも28万ドル(約3080万円)を同社に貸していたからとも言われている。関係者からは、「編集者の給料は未払いのまま」という声や、「皆からお金を借りていた」という声も上がっている。
ブラント パブリケーションズが抱える給料未払い訴訟は、バロンとその妻の訴訟だけではない。「インタビュー マガジン」の元営業担当で最終的に同社の共同発行人も務めたジェーン・カッツ(Jane Katz)は不当解雇と23万ドル(約2530万円)以上の未払い賃金を求め2017年に同社を訴えている。さらに6年間にわたり「インタビュー マガジン」のプレジデントを務めたダン・ラゴーン(Dan Ragone)も約17万ドル(約1870万円)の未払い賃金を巡って16年に同社を訴え現在も係争中だ。
近年「インタビュー マガジン」からは有能な人材が流出し、オンライン版の更新さえままならなかった。さらに、バロン前エディトリアル・ディレクターとテンプラー前クリエイティブ・ディレクターも同社を去った今、幹部は数少ない。オースティン・トソーネ(Austen Tosone)=アシスタント・エディターはツイッターで「ここ6カ月ほどは激動の日々だった」と明らかにしている。
ブラント パブリケーションズのオーナーは、ウォーホルの大ファンであるという億万長者、ピーター・ブラント(Peter Brant)だ。ピーター=オーナーは、ウォーホルが1987年に死去した直後に当時の妻とともに「インタビュー マガジン」を買収した。その後、イングリッド・シシィ(Ingrid Sischy)とサンディ・ブラント(Sandy Brant)が、エッジーなファッションシューティングやさまざまなポップカルチャーを取材し、同誌をファッションとアート業界人必見のアイコン的雑誌に成長させた。最高経営責任者兼発行人を務めていたサンディはブラント パブリケーションズの50%の株式を元夫に2008年に売却した。その後、バロン=前エディトリアル・ディレクターの指揮のもと、「インタビュー マガジン」はリブランディングされた。ピーター=オーナーの娘、ケリー・ブラント(Kelly Brant)は現在、同社の社長を務めている。