「プラダ」2016-17年秋冬ミラノ・メンズ・コレクション(左)と「コム デ ギャルソン・オム プリュス」2016年春夏パリ・メンズ・コレクション(右)
皆さん、こんにちは。ウェブで既報の通り、昨日は「プラダ(PRADA)」のファッションショーが開かれました。ワタクシ、こちらのショーを映画「ケレル」に通じるものと解釈しましたが、これは僕の解釈で正解とは限りません(もしかしたら、おおハズシしているのかも!)。けれど、ファッションの世界、特にクリエイションについては、それでも良いと思っています。みなさんにファッションに関して好き・嫌いがある通り、ひとつのコレクションに対して、人はさまざまなことを思います。それは、時に肯定的であったり、時に否定的であったり。それが個々のスタイルにおいては個性につながり、マーケットにおいてはデザイナー交代に代表されるビジネスニュースになっていくのです。
ショーを見た人が、実にさまざまな意見を持ち、それを語り合うコレクションの代表格は、メンズにおいては「プラダ」と「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」(以下、「オム プリュス」)でしょう。この2ブランドは、ショーに際してプレスリリースのようなある種の“正解”を配布することはなく、デザイナーがインタビューに応じることも極めて稀。ブランド側から、公式なステートメントが発せられることはありません。そして、コレクションは一歩ずつ、もしくは半歩ずつ歩みを進めるほかのブランドとは大きく異なり、時に半年前のアイデアをあっさり捨て去ったり否定したりで真逆のスタイルを提案することも。
こんな理由で、僕らはこの2ブランドのショーになると、「さぁ、ものスゴ~く考える時間の始まりだ」と感じ、ある種のプレッシャーにさいなまれます。そして、最初の3ルックくらいはメモを取らず洋服とモデルだけを必死に見つめ、だいたい混乱。慌ててメモを取り始め、音楽を検索し、中盤に“何か”の断片をつかみかけると、後半にはそれが裏切られて疑心暗鬼に陥り、ショーが終わっても「ムムム……。今のは???」となりがち。周りの人に「どうでした?」「あれは、なんだったんでしょう?」と話を向け、頭のモヤモヤを解決しようと必死になります。「悩み」系ブランドの筆頭といえるでしょう。そこで今日は、この2ブランドのコレクションについて、「悩み」方のお話をしてみようと思います。もちろん、この「悩み」方も決して正解ではなく、あくまで僕の場合は、という前提で読んでいただければ幸いです。
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「プラダ」の見方
2016-17年秋冬「プラダ」メンズ・コレクションのフィナーレ
「プラダ」のコレクションを見て悩む際は、「ビジネス」や「ポジティブ」そして「未来への道しるべ」という概念が欠かせません。僕にとってのミウッチャのイメージは、「未来を示す、灯台のような存在」。彼女の洋服は時に強いですが、それでも戦いの洋服ではなく、開拓する洋服のイメージです。そして、類まれなるマーケットセンスを持っていますから、そこには必ず、今のトレンドや、この次のトレンドになりえるアイデアもしくは消費者のニーズが隠れています。
昨日のマリンスタイルも、同じです。特に終盤のシャツルックは、水兵が格闘の結果、ボロボロにしてしまったように脱構築的で、左右非対称。これは、今「クレイグ グリーン」などが提唱するスポンテニアス、着る人に解釈をゆだねる自発的な洋服の「プラダ」版と解釈しました。このように「プラダ」は、そこに必ずマーケットの存在が潜んでおり、「上手いなぁ」と思うことがしばしばです。
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「ギャルソン」の見方
一方、「オム プリュス」のショーを見るとき、僕は、「クリエイション」や「反骨」「未来への戦い」という概念を持ちながら、コレクションと対峙します。僕にとっての川久保玲さんのイメージは、「未来を勝ち取る、ジャンヌ・ダルク」。彼女の強い洋服は、常に戦いの結果生まれたような気がしてならず、時には、「その周囲には、累々たる屍が存在するのでは?」とちょっぴり怖くなる時もあります。もちろん、彼女も類まれなるマーケットセンスの持ち主ですが、だからと言って「オム プリュス」のコレクションに今のトレンドや、この先のトレンドがあるとは限りません。「オム プリュス」は、時にこれらを完全に否定し、その強い姿勢を、ブランドを超越し、会社としてのコム デ ギャルソンのアイデンティティにしています。と、2つのブランドは同様に「悩ましい」存在なのですが、だからと言って「悩み」のタイプは同じではないのです。
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次ページ:「プラダ」以外にもある「悩み」系ブランド ▶
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ところで最近は、この「悩む」系ブランドに新たな仲間が加わろうとしています。それは、アレッサンドロ・ミケーレの「グッチ(GUCCI)」と、ジョナサン・アンダーソンの「ロエベ(LOEWE)」&「J.W.アンダーソン(J.W.ANDERSON)」などです。こうしたブランドは、あらゆるカルチャーを飲み込み、それをデザイナーの自由な発想で形にしています。そして彼らは、ランウエイショーを正解発表の舞台として使っているのではなく、あくまで、「この洋服、僕ならこうやって着るけれど、あとはみなさんでどうぞ」と多くの判断を僕らに委ねている気がするのです。その証拠に、これらのブランドのコレクションからは、特定の男性像やインスピレーション源となった人物などが登場することは、ほとんどありません。その意味で、コレクションは、実にスポンテニアス。着る人の自発性を認める、懐の深いコレクションです。
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だからこそ、「プラダ」や「オム プリュス」「グッチ」「ロエベ」「J.W.アンダーソン」の洋服は、スタイリングが楽しいですよ~。正解がないから、すっごく悩むんです(笑)。マーケットは一時期、忙しい男性・女性に向けて、とにかく簡単にキマる洋服を提案していたように思います。しかし今のトレンドセッターは、その真逆。いろいろ考えなければ、自分のスタイルが作れない洋服、でもいろいろ考えれば、自分だけのスタイルが作れる洋服を生み出しています。それは、ときに面倒かもしれませんが、実は、すっごく楽しいものです。だって、自分一人でアレコレ考えたり、友達と一緒にアレコレ考えたり、コミュニケーションが生まれるでしょう?
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超私的、2016-17年秋冬コレクション・ランキング
このコーナーでは、「着たい!!」「スゴい!!」「新しい!!!」などの直感をもとに、超・個人的なコレクション・ランキングを作成。毎日更新していきます。ミラノメンズ2日目は、「プラダ」が他とは一線を画するスタイルでスマッシュヒット!「ボッテガ・ヴェネタ」も、ニードルパンチなどの素材感にこだわったコレクションで、順当にランクインです。「ヌメロ ヴェントゥーノ」も、売れそうなワーク&ミリタリーのコレクションで、安定感が漂っていました。
1. シブリング
2. エルメネジルド ゼニア
3. マルニ
4. プラダ
5. J.W.アンダーソン
6. ボッテガ・ヴェネタ
7. ジル・サンダー
8. バーバリー
9. ニール バレット
10. ヌメロ ヴェントゥーノ
11. ヴェルサーチ
12. ケイスリー ヘイフォード
13. クレイグ グリーン
14. 1205
15. ミッソーニ
16. ロベルト カヴァリ
17. アディダス オリジナルス バイ ホワイト マウンテニアリング
18. マーガレット・ハウエル メンズ
19. アレキサンダー・マックイーン
20. クリストファー ケイン
ミラノメンズ3日目は、「グッチ」や「フェンディ」などのコレクションを控えていますが、僕は、時計取材のためにジュネーブへ!ランキングの更新は、ちょっとだけお休みです。
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