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素人でもモノが売れる時代だからこそプロが必要? 営業のプロ集団とキャンプファイヤーと提携したワールドの共通点 

 「WWDジャパン」6月4日号に、セールス・エージェント特集を掲載しました。セールス・エージェントとは、主にブランドやメーカーに代わって、取引先販路を開拓したり、取引先との関係性向上に努めたりするプロフェッショナル集団のことです。ここ数年、特に中小規模のデザイナーブランドの市場でセールス・エージェントの存在感や必要性が増していると感じ、同僚とともに今回の特集を企画しました。

 ECやSNS、フリマアプリ、手作り品のマーケットプレイス(「ミンネ(minne)」などがその代表)がすっかり定着した現代は、言葉は乱暴ですが“素人でもモノを作って売れる時代”です。OLさんが趣味で作っていたアクセサリーを「ミンネ」に出品したら、あれよあれよという間に人気になった、なんていう話は枚挙に暇がありません。シェア工房のような場も増えているため、売るという面だけでなくモノを作るという面もハードルは下がっています。直近ではインスタグラムがEC機能を搭載しましたが、これも個人や中小のブランドが消費者にダイレクトにモノを売ることを更に後押ししていくものです。

 このように、素人でも比較的容易にモノが作れて売れる時代に、冒頭で書いたように販路開拓のプロフェッショナルの存在感が増しているというのは矛盾しているように聞こえるかもしれません。ただ、こんな時代だからこそ、逆説的にプロの力が際立っているように感じます。

 インターネットの力を用いれば、局所的なヒットや一部のコミュニティーに刺さる商品を生み出すブランドを作ることはかつてほど難しくない。でもそれは、そんなブランドなら今は無数にあるという意味でもあります。“その他大勢の中の一つ”というステージを超えて、ブランドとしてある程度の規模をめざしメジャーになっていこうとするときに、販路開拓のプロであるセールス・エージェントの力がモノを言う。以前、インスタグラムの発信力を強みにEC主軸でバッグを売っているデザイナーが、「私くらいの規模のブランドだったら、今はいくらでもある。ここからどう頭一つ抜け出るかが大変なんだ」と語っていたのが印象的です。彼女もブランド認知を高めるために販売代行企業(セールス・エージェントの一種)と契約しています。

 このように書くと、「ブランドとして規模を拡大する、メジャーになる」という発想自体が、今の時代はダウントレンドじゃないか、小さなコミュニティー内で売り続ければいいじゃないか、といった反論が出るかもしれません。確かに、少人数のスタッフで無理せずモノ作りをし、お客もハッピーというブランドの方が、低成長の時代には合理的に見える。そういった形のブランドを否定する気は全くありませんが、ある程度の規模を追求しないと、社会に対して与えられるインパクトが小さいことも事実です。

 東京のデザイナーブランドを例にとると、彼らは知る人ぞ知るブランドというステージを抜け出すために、セールス・エージェントと契約します。契約後、エージェントたちはブランドの方向性や広げるべき販路を決め、人脈力や情報力を駆使して優良店のバイヤーを展示会に呼び、よい形で拡販していく。中小のブランドは内部に営業スタッフを抱える体力がないため、外部のプロと組んでいるのだと見ることもできますが、それよりも、今は「餅は餅屋(=ものごとはその道のプロに頼む方がいい)」という意識がデザイナーの間で強いように感じます。だからセールス・エージェントが求められる。世界的なブランドになった「サカイ(SACAI)」が、まさにそうした手法でステップアップしていったことも影響を与えているのかもしれません。同時に、今はファッション業界に限らず、あらゆる業種でフリーランスの個人や小さな組織同士が契約し、チームを組んでいくという流れが増えていることも、背景の大きな流れとしてあるようにも感じます。

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