百貨店各社の今夏のクリアランスセールは、例年通りの6月29日開始に加えて、7月27日開始の2回に分けて実施する店舗が増えそうだ。これまで各社のセール開始日は7月1日前後だったが、年々盛り上がりが弱まり、収束するのも早くなっていた。百貨店の業界団体である日本百貨店協会(百協)は、端境期対策として7月27日のプレミアムフライデーに合わせた販促イベント「プレミアムサマーバザール(仮称)」を企画。開催店舗ではこの日から第2弾のセールを行う。
アパレル企業約350社で構成する日本アパレル・ファッション産業協会(アパ産協)が、百協に対して「端境期の活性化策として、二つ目の山を作り上げたい」(戸張隆夫アパ産協専務理事)と呼びかけ、プレミアムサマーバザールが企画されるに至った。一般的に秋物の衣料品が動き出すのは8月後半以降。セール収束後の7月半ば以降は気候としては真夏だが、百貨店の売り場は夏物の売れ残り、あるいはすぐに着るには早い秋物などが並ぶため、服は売れにくい状況が続く。この時期の売り上げを底上げしたいという思惑で、百貨店とアパレルは一致する。プレミアムサマーバザールでは、百貨店側は集客力のある各種のイベントを催し、アパレル側はセール品だけでなくプロパー(正価)で売れる新商品も用意することで協力態勢を築く。
百協の赤松憲・会長の出身企業である三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、春物衣料を6月29日から、夏物衣料を7月下旬から値引きするとすでに公表していた。これもプレミアムサマーバザールに合わせたものだ。現時点で正式に実施を発表している百貨店は三越伊勢丹HDだけだが、そごう・西武は「実施する方向で動いている」(同社広報)、大丸松坂屋百貨店と高島屋も最終決定には至っていないものの前向きな姿勢だ。
ただ、セールに期待する手法には業界内からもさまざまな意見がある。アパ産協に加盟するあるアパレルの社長は「セールの乱発が消費者から見透かされて服が売れなくなっているのに、時代に逆行した施策ではないか」と疑問を呈す。一方、別のアパレルの幹部は「(端境期は)MDの工夫で秋色・夏素材の服を強化してきたが、効果はたかが知れている。(2回のセール実施は)背に腹はかえられぬ状況だ」と苦しい胸の内を明かす。