ファッション

“1968年”を知る Vol.6 旧社会主義国の若者が求めた自由とストリートファッションの共鳴

【COMMUNISM】

 崩壊前のソ連は、他国の文化に対して閉鎖的で、経済面でも停滞していた。資本主義国からの輸入を大幅に制限し、一般市民が着る洋服も国産品に限定されていた。1968年春、ソ連の影響下にあったチェコスロバキアのプラハで、知識人や学生を中心に民主化・自由化を望む声が強まり、チェコスロバキア共産党による民主化改革も打ち出された。「プラハの春」と呼ばれたこの一連の自由化運動は、ソ連のブレジネフ政権の軍事介入により鎮圧され、若者の夢は打ち砕かれる。

 しかしその20年後、80年代末の冷戦終結を経てソ連は解体し、東ヨーロッパ諸国にはレイブやヒップホップ、ゴス、パンクなど西側のカルチャーの波が一気に押し寄せてきた。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」と「ヴェトモン(VETEMENTS)」を率いるデムナ・ヴァザリア(Denma Gvasalia)は、ソ連の構成国であったグルジア(現ジョージア)で81年に生まれ、ソ連解体前後にパーソナリティを形成した世代だ。彼がファッションに落とし込むミクスチャー感は、何にも属さず、自由を求める精神を基本とするストリートカルチャーに共鳴する。それは移民問題やLGBTQなど人種や性別を超えて、1人の人間としてどうあるべきかというこの時代の問題意識にも通じるものだろう。

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