TSIホールディングスは9日に行われた2018年3~5月の決算会見で、21年2月期を最終年度とした3カ年中期経営方針を発表した。5月25日に就任した上田谷真一・新社長による新方針として、「赤字事業の根絶」「成長事業・成長領域への投資」「事業会社が力を最大限に発揮できる連邦経営」の3つを掲げる。赤字事業の廃止に今期(19年2月期中)にめどを付け、事業会社に権限を移して経営の柔軟性と機動力を高める。
成長戦略として、競合他社との価格競争やパワーゲームに巻き込まれないための、ブランドロイヤルティーの向上を図る。「低価格の量販店、新興勢力のアパレル、海外のファストファッションに勝つのは難しい。小規模で、名が立っていないブランドは生き残れない。しかし、日本やアジアには分厚い中間層がいて、好みはあるがブランドにコアなファンがいる。その中で定価でしっかり商売する事業の集合体にしていく」(上田谷社長)という。
「ナチュラルビューティーベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC)」やナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)のボリュームゾーンは品質向上や新ラインの立ち上げでブランド価値を高めていき、「アドーア(ADORE)」や「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」などは認知度アップのPRや販路を強化する。アングローバルの「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」は現在日本とヨーロッパのみで販売しているが、今後は海外の幅広い展開を視野に入れる。子会社のアルページュは17年夏からセールを廃止し、店頭ではプロパー品のみを販売した施策が功を奏している。M&Aにも前向きで、大型企業だけでなく、規模が小さいブランドでも成長可能性の見込めるブランドを買収する考えだ。
これまでホールディングス主導の構造改革を進めてきたが、上田谷社長は「事業会社に振り子を戻す。齋藤・前社長は数字とロジックを規律として進めた功労者だ。心を鬼にして不採算事業の廃止や撤退を決断し、有効性のある戦略を進めた。一方で、ここからは、それだけでは伸び代が見込めないフェーズに入った。子会社にはインポート中心の事業やSPA、メーカーもあり、それぞれの強みの軸が異なる。本部が数字を眺めて指令を出すだけではなく、私自身が個別の事業の中に踏み込んで、一緒に考えていく時期だ」と話す。
TSIの19年2月期第1四半期(3~5月)の売上高は前年同期比0.8%増の391億円で、営業利益は同34%減の11億円だった。好調ブランドは、ナノ・ユニバースが(前期比9%増)、「マーガレット・ハウエル」(同2%増)、「パーリーゲイツ」(同4%増)、「ヒューマンウーマン(HUMAN WOMAN)」(同2%増)だった。
アングローバルのアングローバルショップ(19店)を8月中に閉鎖し、「ゴア(GOA)」などを運営するWAVE Internationalを11月末に解散する。