ライフスタイルECサイト「スタイルストア」やTENOHA代官山の実店舗「&スタイルストア」を運営するエンファクトリーが6月、2つのプライベートブランドを立ち上げた。働く女性向けのアパレルブランド「キルカ(KILKA)」と外でも着られるパジャマブランド「ネルズ(NELLS)」で、ともに中間マージンを省いて低価格を実現するD2C(Direct to Consumer)モデルをとっている。
ブランドを手掛けるのは「スタイルストア」でバイイングを担当する中井明香バイヤーと楠美冴登バイヤーの2人。セレクトショップを展開する中で、顧客のニーズをくみ取り、自店の顧客が欲しいと思うテイストのブランドを作ったというわけだ。特に「キルカ」は顧客にアンケートを取って、二人三脚でアイテムを作ってきたという。今後は7人いるバイヤーそれぞれがプライベートブランドを展開していくことも想定しているそうだ。
近年、ECモールなどのプラットフォーム企業が顧客ニーズに合わせたオリジナルブランドを作る事例は増えている。今年もっとも有名なのはスタートトゥデイの「ゾゾ(ZOZO)」で、他にもCandeeが運営するライブコマース「ライブショップ!」がAKB48と組んだ「ユーニードナウ(UNEEDNOW)」などがある。エンファクトリーに所属する高坂昇兵ショッピングユニット バイヤー・プロデューサーが手掛けるブランド「フーフー(FOUFOU)」も、マッチングサービス「ヌッテ(NUTTE)」と協業することで、コスト削減を実現し、D2Cモデルの効率化を加速している。これらはデータを活用してムダのないモノ作りを実現していることが共通点だろう。
そもそも、D2Cというキーワードが出てきたのはここ数年の話だが、その意味するところを正確に理解している人は意外と少ない。D2Cビジネスの概念についてエンファクトリーの清水正樹・副社長に聞くと、「基本的には店舗を持たず、EC専売でダイレクトに顧客に販売をする業態。原価率も高く、セールや中間マージン、店舗費用などを省くために販売価格はかなりお手頃になる。本来セレクトショップなどに卸すと集客をしてくれるわけだが、自分で販売まで行うとなると、拡散力やファンをつけるだけの他にはないブランドストーリーが欠かせない」と説明する。高坂昇兵プロデューサーも、「ファンとの距離感がこれまでとは異なる。例えば、音楽業界でもこれまではライブハウスが集客を担っていたが、今はアーティストにファンがつく時代。これと同じことがファッション業界でも増えてきた」と答える。
もう一つの特徴について、清水副社長は「トライアルができることだ」と語る。「『キルカ』でもSKUあたりの生産数は50着ほど。これは大量消費の時代には考えられないロット数だろう。いろいろな商品をテスト的に販売し、顧客の反応を見ながらロット数を増やしたり、商品を改良することで、少しずつ利益を上げていく仕組み。工場とブランド、顧客がいい関係のトライアングルを築けている」。直接販売によりコストを削減しながらも、売れ行きなどのデータをもとに商品ラインアップを効率化していくことこそが、D2Cモデルの醍醐味というわけだ。