TSIホールディングス傘下で、「アプワイザー・リッシェ(APUWEISER-RICHE)」などを運営するアルページュは、実店舗とECの連携強化を進めている。6月11日から一部店舗に専用のアプリを導入し、実店舗で在庫切れの場合はアプリを通してEC在庫から商品を引き当て、顧客の自宅に発送している。従来ならば売り逃していたかもしれない機会を逃さずとらえることで、「導入店舗を順次増やしていけば、1店舗出店するよりも効率がいい」と野口麻衣子・社長は話す。12月中にアプリを全50店に導入すると共に、販売員のアプリ研修を推進。2019年2月期から本格稼働し、まずは年間1億3000万円、将来的には年間3億円の売り上げを目指す。
現在、「アプワイザー・リッシェ」「マイストラーダ(MYSTRADA)」などの各ブランドと、自社セレクト業態のアルページュストーリー(ARPEGE STORY)の計12店舗にアプリを導入している。アプリはシステム構築のAMSと共同で開発した。販路や立地、店舗面積、売上高など、さまざまなタイプの店に導入し、反応を測定中だ。「中小規模の店舗では、売り場面積の制限によって全商品を展開できていなかった。販売員がアプリでの提案に慣れれば、そういった商品を売ることも可能になる」と見込む。
店頭に在庫がなかった場合、アプリを立ち上げ、アプリ上に出るバーコードを読み込んでその場で決済する。客が自社ECの会員であれば、発送先の住所などを記入する必要もない。売り上げはECではなく実店舗に計上することで、商業施設側との摩擦や販売員のモチベーション低下を防ぐ。同社は接客によるセット購入率の高さが強みの一つだが、店頭接客とECを組み合わせることで、ECでは通常下がりがちなセット率も維持することができるという。
7月1日~30日の期間では、アプリ経由で計200点、売上高370万円の購入があった。特に利用が多かったのは「アプワイザー・リッシェ」有楽町マルイ店、アルページュストーリー ルミネ新宿 ルミネ2店。現在、実店舗の顧客で自社ECの会員登録もしている客は約6割というが、アプリ使用をきっかけに実店舗顧客がECへも登録するという効果も出ている。実店舗間での商品移動が減ったことによる経費削減や、売れ筋商品の追加ジャッジの早期化というメリットも生まれている。
同社が自社ECのアルページュストーリーを立ち上げたのは6年前。当初からECと実店舗のデータ一元化を掲げ、O2O(オンライン・トゥー・オフライン)施策の一環として、ECのリアル版としてアルページュストーリーの実店舗も出店してきた。現在、EC化率は36~37%。19年2月期中に40%を目指す。
今回のアプリは売り上げを実店舗で計上し、店舗によっては店頭にない商品までがアプリ経由で売れるようになる仕組み。ただし、同社と取り引きのある商業施設側からは「時代の流れとしてこのような売り方が求められていることは理解するが、顧客との繋がりはわれわれの生命線であり、ECの会員登録によって顧客が流出する可能性は否めない」といった葛藤も聞かれる。