ファッション

カニエ・ウェストからメタリカまで 多くのミュージシャンに愛されるジュエリー「グレートフロッグ」

 1972年にパターソン・ライリー(Paterson Riley)が立ち上げたイギリスを代表するジュエリーブランド「グレートフロッグ(THE GREAT FROG)」。その無骨で存在感のあるデザインは、レオナルド・ディカプリオ(Leonard DiCaprio)をはじめとしたハリウッド俳優から、レディー・ガガ(Lady Gaga)、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones )、エアロスミス(Aerosmith)、カニエ・ウェスト(Kanye West)らミュージシャンまでファンが多く、今では一般的モチーフとして浸透しているスカルリングの生みの親だという。2003年にデザイナーに就任した創業者の息子レイノ・レトーネン・ライリー(Reino Lehtonen-Riley)が来日。「小さい頃から友達が遊んでいるのを横目に毎日ジュエリーを作っていた」と笑いながら話す陽気な彼に、ブランドのシグネチャーであるスカルリングや、同じくジュエリーデザイナーのYOONについてなど話を聞いた。

WWD:スカルリングの生みの親というのは本当?

レイノ・レトーネン・ライリー「グレートフロッグ」デザイナー(以下、レイノ):ローマ時代からスカルリング自体はあったから、正確に言うとイギリスでスカルリングのトレンドを作り、モダンバージョンを生み出したということ。ブランド設立当初の1972年頃に初めて作ったんだけど、70年代はヒッピー文化全盛期。だからスカルリングのような怖いイメージは受け入れられなかった。みんな顔の下はスカルなのにね。

でも70年代後半から80年代にかけてヘビーメタルの文化が生まれ、少しずつスカルリングが浸透していった。今では一般的なデザインとして浸透していることがうれしいよ。

WWD:長年スカルデザインを続けていると似てきてしまうのでは?

レイノ:たしかにシグネチャーだから作り続けているけど、スカルデザインは一つ一つ違うんだ。デザインするにあたって本物をたくさん見てきたし、アンティークのスカルも20体分持っている。スカルには実際に生きている人と同じくらいの情報量があって、それぞれに個性があり、見ていると人生や顔が想像できる。今じゃ生きている人の顔を見て、どんな骨をしてるかわかるようにもなってきた(笑)。

ちなみに4年前に事故に遭ったことが原因で、僕の頭蓋骨の一部はチタン製なんだ。その半年前にアンティークショップで購入したスカルがかなり破損してたから、金張りみたいにシルバーで補修したら全く同じところを骨折した。呪いだね(笑)。

WWD:SNSの普及もありオーダー数はこれまでと比べてかなり増えていると思うが、生産は追いついている?

レイノ:今は大量生産できる工場や3Dプリンターがあるけど、僕らは今でも全て手作りにこだわっている。伝統を重んじているからだけど、自分でもクレイジーだと思う。繁忙期の12月はとにかくツラい。1年の売り上げの50%以上を占めていて、「シュプリーム(SUPREME)」みたいに毎日オープン前から行列ができるんだ……。それでもやるしかないからやってるけどね。ちなみに僕には子供がいるんだけど……理由はわかるだろ?一番安い費用で人を雇えるからさ(笑)。

WWD:日本はインスピレーション源の一つでもあると聞いたが?

レイノ:インスピレーション源はたくさんあるけど、侍の服装、鎧、刀のツバ、刺青には大きくインスピレーションを受けているよ。スカルと似たデザインの般若のリングを作っているくらいだからね。今回の来日では葛飾北斎の版画や水墨画を見に行ったんだけど、北斎の版画では桜の木の版を使っていた。その版木が欲しいって欲望が、インスピレーションへと昇華されることもある。

実は10歳くらいの時に福岡に住んでいたことがあるんだ。僕の母はとにかくクレイジーで、まだ小さい僕をバニーガールのお店やスナックなどいろいろなところに連れ回していたーーそれこそウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)の映画みたいにね。だから日本には愛着があって、いまでも毎年、横浜で開催される世界的に有名なモーターショーのために来日しているよ。来日の口実に東京店のオープンも企てている(笑)。若い頃にはニュージランドに住んでいたことがあったからサーフィンが大好きで、そこから影響を受けることもあるね。

WWD:ミュージシャンに特に人気だそうだが?

レイノ:英国を代表するロックバンドのモーターヘッド(Motorhead)のフロントマンだった故レミー・キルミスター(Lemmy Kilmister)のジュエリーは全て僕らが作っていた。ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones )のメンバーは今でも着けていくれている。英国を代表するヘヴィメタルバンドのアイアン・メイデン(Iron Maiden)は結成初期の頃、父親の作ったジュエリーが欲しくても高くて買えず、適当なリングにスプレーしてうちのモノに見せていたらしい(笑)。今度、メタリカ(METALLICA)とはコラボジュエリーを発表する予定だから楽しみにしててくれよ!

WWD:ラッパーもジュエリーを身に着けているイメージがあるが、彼らはカスタマー?

レイノ:ジェイ・Z(JAY-Z)にカニエ・ウェスト(Kanye West)、ウータン・クラン(WU-TANG CLAN)らレジェンドたちは身に着けてくれているよ。彼らのジュエリーの着け方は、いい意味で日常からかけ離れたものだからすごく好きで、インスピレーションを受けることもある。父親はロックやヘヴィーメタルが好きだったけど、僕はヒップホップが好きだからね。

WWD:「ハリー・ポッター(Harry Potter)」など多くのハリウッド映画に衣装提供していると聞いたが?

レイノ:「The Dark Knight」でジョーカーを演じたヒース・レジャー(Heath Ledger)が着けているリングは「グレートフロッグ」のもので、他にも例を挙げるときりがない。本当は衣装提供の依頼がきたら製作するんだけど、ここ数年はLAのショップに映画のスタイリストが来て買っていってしまうことが多い。だから映画を見てたら「え、これうちのじゃないか!」ってことばかりだよ(笑)。

WWD:キム・ジョーンズ(Kim Jones)の「ディオール(DIOR)」のジュエリー部門に参画したYOONは知ってる?

レイノ:YOONのスタイルは僕とまったく違うけど、素材や物質の使い方が予想外でクリエイティブだから、最初の頃からずっと注目してる。実際に会ったことはないんだけど、コラボレーションしたいよ。YOON、「アンブッシュ(AMBUSH)」のスカルリングを作ろう!(笑)。

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