香港の大手繊維商社リー&フォン創業家のプライベートファンドであるフォン・インベストメンツ(Fung Investments)は、インドの小売り店向けのECプラットフォームであるショップX(ShopX)に3500万ドル(約38億円)を出資した。ショップXはインドで5万店以上の中小規模の小売り店が採用するECのプラットフォームで、受注や物流、決済などの機能を持ち、1200万社以上のサプライヤーが取引に利用している。世界最大の衣料品サプライヤーの一つであるリー&フォンは、バーチャルサンプルやデジタル生産を軸にしたデジタル・サプライチェーン・マネジメント(=SCM、商品の企画から調達、物流、販売までの一連の商流の最適化のこと)改革を猛烈な勢いで進めており、ショップXへの出資もその一環になる。
リー&フォンの親会社であるフォン・グループ(Fung Group)のヴィクター・フォン(Victor Fung)会長は「急成長するインド市場への参入の足がかりになるだけでなく、ショップXのやり方は他のエリアにも広げられる余地がある」と語る。調査会社のデロイトリサーチによると、インドの小売市場は2020年までに1兆1000億ドル(約122兆1000億円)になると予測されており、そのうちの9割以上が中小の小売店だと言われている。
2015年設立のショップXは、インドIT大手のインフォシス(Infosys)の創業者で著名投資家兼起業家としても知られるナンダン・ニレカニ(Nandan Nilekani)が個人で1800万ドル(約19億9800万円)を出資した注目のスタートアップ企業だ。ニレカニは「ショップXのやり方は、インドの小売り業の大半を占める零細小売り店が活用できる優れたビジネスモデルであり、今後も非常に有望だ」とコメントしている。
現在デジタル改革を推進中のリー&フォンは、昨年8月には世界最大の横編みニット企業であるサウスオーシャン・ニッターズ(South Ocean Knitters)と合弁会社コバルト・ファッション(COBALT FASHION)を設立。今年7月には日本の編み機大手の島精機製作所をパートナーに、コバルト・ファッションのR&Dセンター内にイノベーションラボを設立。今年2月にも中国のEC大手JDドットコムと合弁でAI(人工知能)を使ったリテールテックの企業を設立している。