百貨店で、高額品販売が絶好調だ。2018年1~6月の売れ行きを主要百貨店に聞いたところ、特選や宝飾売り場は軒並み前年比2ケタ増。小田急百貨店新宿店の特選売り場のように、同30%増だったという店舗まである。
高額品好調の要因は2つ。インバウンド(訪日外国人客)と日本人富裕層だ。インバウンドは15年に爆買いで急激に盛り上がったものの、16年に中国の税制改正で一気に冷え込んだ。「インバウンドというカンフル剤がなければ、百貨店は時代に取り残された構造不況業種である」という側面が、経済誌などでしきりにクローズアップされたのも記憶に新しい。しかし、幸いにも17年夏頃からインバウンドは復調。あわせて、百貨店各社は日本人富裕層の囲い込みを目指し、外商販売の強化に力を注いでいる。インバウンドに依存しすぎては危ないと、富裕層との関係強化で安定的に売り上げ増を図るというのが狙いだ。
さて、ここで話題にしたいのが、この富裕層という存在。実際彼らはどんな場面で、どんな商品を買っているのか。百貨店の売り場担当者に話を聞くと、「本当にそんなことがあるのか」と思わず驚いてしまうような話題が次から次へと出てきた。
「ようやく1億円以上の商品がコンスタントに売れるようになってきた」と話すのは、伊勢丹新宿本店の宝飾売り場。イベント時以外でも、「グラフ(GRAFF)」のダイヤモンドジュエリーなどで1億円以上の商品をそろえておくようにしたことで、認知が広がったという。数百万円、数千万円のハイジュエリーが売れたという話ならば他店でも頻繁に聞いた。ラグジュアリーや宝飾のブランドはこの間、ブランドの世界観を体感できるような大型イベントの開催に力を注いでいる。高額品販売の主戦場はそこだ。
たとえば、「ブルガリ(BVLGARI)」は4月に、日本庭園で有名な京都の東本願寺渉成園で展示会を実施。「ショーメ(CHAUMET)」は7月に、東京・丸の内の三菱一号館美術館でブランドの歴史をたどる展覧会を開催した。こういったイベントに百貨店が外商顧客を連れていき、商品レクチャーなどを含めたスペシャルな体験を提供。あわせてその場で受注を取る。富裕層も気分が高揚して思わず買ってしまうようで、「ショーメ」の展覧会に連れて行った外商顧客が、「展覧会内容に感銘を受けてティアラを購入した」という店もあった。
純粋に楽しむために高額品を買っているというよりも、資産形成の一環と思われる購買も目立つ。「ダイヤのルース(裸石)が売れる」という声が松坂屋名古屋店の宝飾売り場から出たが、これはまさに資産目的と思われるもの。同店では、“平成”と記された純金小判も売れているそうで「資産価値としての金という側面と、今年で最後となる平成への思いが重なって購入につながった」のだという。
長らく百貨店の屋台骨だった婦人服が売れない時代。その分を補填するためにも、今後ますます高額品販売強化のムードが各社で強まりそうだ。