「WWDジャパン」と「WWDビューティ」は、初の合同EC特集(「WWDビューティ」は7月26日号、「WWDジャパン」は7月30日号)の関連イベントとなるECセミナーを8月31日に東京・目黒のアマゾン ジャパンで開催した。セミナーには紙面にも登場した「アットコスメ(@COSME)」運営企業のアイスタイルとサイト・アプリの多言語化を行うWOVN Technologies、低料金のECパッケージサービスなどを提供するGMOメイクショップ、アプリ制作サービスのヤプリ(YAPPLI)と同社のサービスを利用するTSIホールディングス、そして決済サービス「アマゾン ペイ(AMAZON PAY)」を提供するアマゾン ジャパンの計6社の代表者が登壇。それぞれの視点からネット時代の新しい売り方を探った。
「アットコスメ」の吉松社長が語る次世代のデータ活用法
まず、基調講演者として「アットコスメ」を運営するアイスタイルの吉松徹郎・社長が登壇。これまで20年にわたって美容情報を発信し続けてきたプラットフォームだからこそ分かるデータの活用法について語った。「自分で集めたデータを自社のビジネスに活用してもあまり大きな変化はない。例えば自社商品を扱っている卸先のデータを参考するなど、“横のつながり”のデータを集めることが重要だ」。また、「アットコスメ」を出会い系サイトに例えて現在の消費動向を解説。「『アットコスメ』でいい化粧品はないか?と探すのは出会い系サイトでいい異性がいないかと探すのと一緒。そこで出会い系サイトを見ていると数多くいる異性をどのように見つけるのかではなく、どのように自分を見つけてもらうのかが重要になってくる。ユーザーも愛してもらうために消費活動を行っている」と語った。
ファッション&ビューティ業界におけるウェブ・アプリの多言語化戦略
続くWOVN Technologiesの上森久之・取締役COOは、インバウンド顧客の対応や海外展開のために不可欠なサイト・アプリの多言語化のポイントを自社サービスの成功事例などと共に説明した。「日本は現在、訪日の外国人が2000万人を超え、2020年には4000万人、30年には6000万人になると言われている。さらに、国内在住の外国人も現在いる200万人から5年以内には250万人になると予想されている。そういった状況下ではサイトのグローバル化がより求められるようになってくる。それには、言語の翻訳とシステムの開発の2つが必要。特にシステム開発には工数がかかり、その分費用もかかる。制限された予算と技術でうまくサイトを海外対応にすることにビジネスチャンスがある」。
ネット実売力アップのカギとなる“コンテンツマーケティング”
3番目に登壇した向畑憲良GMOメイクショップ社長は、コンテンツ制作を通じネット上での存在感を高める“コンテンツマーケティング”の重要性を、自社の事例を交えながら説いた。「“コンテンツマーケティング”は、今まではウェブ主体でPVを集めていくことが重視されてきたが、現在はインスタグラムなどのSNSが中心となっている。“モノからコト”へと言われる時代に、購入したモノでどのような体験にできるかをSNSで発信することでサイトへの流入も増えていく」。その中で向畑社長がキーワードとして挙げたのは“共感”だ。「フォロワーの多いインフルエンサーにブランドの服を着てもらう、といった安易なインフルエンサーマーケティングに、消費者は違和感を感じるようになった。今後はユーザーに自分事として捉えてもらうような“共感”できる情報をSNSで発信することが重要だ」。
オムニチャネルを推進するTSIのアプリ戦略とは?
4番目に登壇したヤプリの金子洋平・執行役員は、同社のサービスを利用しているTSIホールディングスの柏木又浩・執行役員兼TSI ECストラテジー社長と共にトークセッションを行った。 “モバイル・コンフィー(心地よさ)”をテーマに、オムニチャネルを推進するTSIの柏木執行役員は「ショップ内外で一分一秒でも長くブランドの世界観に触れていただくのがオムニチャネルの神髄。顧客ターゲット層の異なる数多くのブランドの顧客接点をどこに置くのかを考えた時にモバイルファーストを考え、アプリ制作に踏み切った」と背景を説明した。「ヤプリを選んだのは、表示速度と開発速度、そしてアプリの心地よい使用感が決め手。スマートフォンがライフスタイルの中心となる中、アプリ戦略が今後のカギとなってくる」。
「アマゾン ペイ」が実現する“買いやすいECサイト”と“コネクテッド・コマース”の世界
最後に登壇したのは、アマゾンジャパンの井野川拓也アマゾン ペイ事業本部本部長だ。「アマゾン」のアカウントを使い他社ECサイト上で安全かつ簡単に決済ができる「アマゾン ペイ」の導入が、どのように“買いやすいECサイト”を実現するのかを事例を交えながら解説した。また、アマゾンが提唱する“コネクテッド・コマース”についてアメリカの事例だけでなく、直近の実店舗への「アマゾン ペイ」導入の事例と共に説明。「アマゾンのお客さまに対して、チャネルとデバイスの垣根を超え、サービスを提供していく。それにより、お客さまの利便性と新しい買い物体験を実感していただきたい。また、導入事業者さまに対してもわれわれのサービスを通じて、企業規模を問わず売り上げのアップにも貢献していきたい」。