三越日本橋本店は、10月24日の改装第1期グランドオープンに向けて、新しい売り場作りの核となるコンシェルジュサービスの詳細を発表した。百貨店の強みである接客に改めてフォーカスし、売り場カテゴリー別の専門家であるコンシェルジュ約90人と、売り場を超えて買い物に同行し、コンシェルジュと客とをつなぐガイド約100人を増員。デジタルも活用することで、カテゴリーを横断したより深い接客を行う。2020年度(21年3月期)は、コンシェルジュサービスによる50億円の押し上げを含み、改装効果で100億円の売り上げ増を目指す。
外商だけでなく、売り場でのコンシェルジュ的なサービスはこれまでも行ってはきたが、組織として情報を共有し、売り場でのパーソナルなショッピング体験を提供する。「ECの台頭によって、リアル店舗である百貨店の価値が人であるとより明確になった。従来の百貨店は商品基軸で売り場を運営してきたが、お客さま、販売員、おもてなしといった、人が中心の百貨店を作る」と浅賀誠・三越日本橋本店長。
従来は商品買い付けや売り場管理に割いていた人員をコンシェルジュやガイドに振り分けた。コンシェルジュは婦人服、紳士服、食品、着物、アート、リビング、ジュエリー&ウオッチの7のカテゴリー別に配置。顧客情報の共有のために社内向けシステムを構築し、コンシェルジュやガイド、バイヤーがスマートフォン経由で随時情報を共有、カテゴリーを超えて客の要望や好みに沿った接客を行う。4月から一部でテスト的にコンシェルジュ制をスタートしたところ、「お客さま一人当たりの買い上げ額は数倍に伸びた」(売り場担当者)と手応えを感じている。三越日本橋本店を皮切りに、将来的には同様のシステムを三越伊勢丹グループ各店に導入する考えもある。
客との関係構築にもデジタルを活用する。新たに構築したウェブアプリ経由で、客はカラー診断などの受けたいコンシェルジュサービスの予約を行う。現時点で企画しているサービス数は111。従来から要望が多かった“クルーズ”“叙勲パーティー”“ガラパーティー”“ブライダル”など10のシーンに向けては、想定されるニーズへの対応を全てまとめたサービスパッケージも用意した。コンシェルジュサービスの一環として、オーダー受け付けにも力を入れる。グランドオープンに向けては、アプリへのチャット機能の搭載なども検討中だ。
売り場の作り方も変えた。1階のレセプションの他、各階にパーソナルショッピングのデスクを設置し、限定会員向けのサロンスペースも大幅に拡大した。
日本橋地区は、9月25日に高島屋が新館をオープンし、日本橋高島屋S.C.が誕生する。競合ではあるが、来街者増というメリットも見込める。浅賀店長は「日本橋高島屋S.C.はファミリー層にターゲット層を広げている印象だが、われわれは逆に絞っているので、お互いにとって差別化になる。一緒に街を盛り上げていきたい」と話す。