前シーズン2018年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークで披露され、話題をさらった「モンクレール(MONCLER)」の新プロジェクト、「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」。外部デザイナーやクリエイターと協業することで新しいイメージを作り出す企画で、実際に百貨店店頭からは、「6月に発売した、藤原ヒロシによる“7 モンクレール フラグメント ヒロシ・フジワラ”が好調だった」などの声があがっている。2019年春夏もプロジェクトは継続し、ミラノ・ファッション・ウイーク初日に大規模なイベントを開催。ダウンブランドが春夏にどんなアイデアを出してくるのかに期待が集まっている。
19年春夏プロジェクトの発表は、「ウイーク初日のイベントと、翌日の展示会の両方を見ると全容が分かる仕掛け」と事前に聞いていたが、初日のイベントを訪れて納得。そこで見せていたのは、各デザイナーやクリエイターの個性が伝わる映像のプレゼンテーション。実物の商品は展示会で見せるといい、イベント会場ではまだ明かされない。
前シーズンは8組のデザイナーやクリエイターと協業。今季はシモーネ・ロシャ(Simone Rocha)、クレイグ・グリーン(Craig Green)、「ノワール ケイ・ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」の二宮啓、「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」の藤原ヒロシ、そして「モンクレール1952(MONCLER 1952)」のチームという、5組との協業を継続した。
シモーネ・ロシャの映像は、英国庭園を背景にした、ピュアな中に毒も感じさせる女の子たちのストーリー。クレイグ・グリーンはガチャガチャと動くからくり仕掛けに商品をまとわせて、その独特な動きに焦点を当てたもの。二宮は、持ち味である凝ったハンドクラフトという作風を、あえて真逆をいくような3Dのバーチャル映像で見せて意表をつく。
そして、藤原ヒロシだ。手描きタッチのアニメーションで見せるのは、荒野を馬で駆けたり宇宙遊泳をしたりといった冒険のイメージ。会場にはもちろん藤原本人も駆け付けた。藤原いわく、「映画のオープニングムービーですごくいいなと思うものがあって、そんな手描きのぎこちない動きの映像がやりたいと映像ディレクターに伝えた。(映像にサッカーの場面やハイソックスをはいた人が出てくるが)僕だったらサッカーは使わないし、ハイソックスもはかせない。でも協業することで自分ならやらないアイデアが出てくるのがいい」。
「モンクレール」との協業については、「僕自身はトラディショナルなものに焦点を当てたいけれど、『モンクレール』側としては、ロゴアイテムなどの分かりやすいものを作りたいという気持ちも分かる。だから、お互いの意見がまとまるところを見つけながら作っている。シモーネや二宮くんの自分の世界を追求した商品もかっこいいし、うらやましい部分もある。でも、売れるもの、ポップなものを作るというのも、『モンクレール ジーニアス』の中で『フラグメント』に求められる役割だと思っている」。この言葉からも、なぜ多くのブランドや企業が藤原と組みたがるのかが分かる。
初日のイベントは幅広くさまざまな人を招いていて、まるでウイークのオープニングを祝うようなお祭り気分。この映像が実際にどんな商品につながるのか、展示会への期待が高まる。