ヴェルサーチ(VERSACE)が近く売却されると複数の情報筋が証言している。ヴェルサーチの買収を直近数カ月で検討していた企業には、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)、ケリング(KERING)、PVHコープ(PVH CORP)、マイケル・コース ホールディングス(MICHAEL KORS HOLDINGS)、タペストリー(TAPESTRY)などが名を連ねるが、ある情報筋は戦略的パートナーと働く米投資家グループの可能性が高いとみている。なお、現時点でヴェルサーチ創業家からのコメントは得られていない。
「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHコープのエマニュエル・キリコ(Emanuel Chirico)会長兼最高経営責任者(CEO)は2018年初めの会見で「数年前と比べて米ドルが強くなっていることを考えれば、国際的ライセンスを買い戻したり、米国外のブランドの買収を検討することは魅力的だ」と買収意欲を見せていた。
一方、ジョン・アイドル(John Idol)=マイケル・コース ホールディングス会長兼CEOも同社のブランドポートフォリオを強化するべく買収を検討していると公言している。同社は17年にもジミー チュウ(JIMMY CHOO)を現金8億9600万ポンド(約1317億円)で買収している。ここにヴェルサーチが加わるとすればさらにラグジュアリーコングロマリットとしての地位を高めることができるだろう。
同氏はジミー チュウ買収時に「われわれは世界的なラグジュアリーファッショングループを築き上げているところだ。国際的ファッションラグジュアリーと業界リーダー、この2つを傘下に収めることによってブランドと商品を多角化でき、アジアとヨーロッパにおいて注目を集めることができる」と語っていた。なお、マイケル・コース ホールディングスからコメントは得られていない。
ニューヨークを拠点とする投資会社ブラックストーン・グループ(BLACKSTONE GROUP以下、ブラックストーン)が14年に株式20%を取得した時点でのヴェルサーチの企業価値は10億ユーロ(約1320億円)だった。残りの株式はドナテラ(Donatella)とサント・ヴェルサーチ(Santo Versace)、ドナテラの娘のアレグラ・ヴェルサーチ・ベック(Allegra Versace Beck)が保有する。今回、ヴェルサーチは当時の倍額で評価されているようだ。
ブラックストーンは株式取得直後、ヴェルサーチの上場を目論んでいたが実現せず、16年5月に当時ヴェルサーチのCEOだったジャン・ジャコモ・フェラリス(Gian Giacomo Ferraris)の後任として、ジョナサン・エイクロイド(Jonathan Akeroyd)前アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)CEOを起用した。業界筋は、ブラックストーンが3〜5年サイクルで投資を考えており、数カ月以内にヴェルサーチ株を売却したいと考えていること、またその際に同業のプライベート・エクイティ・ファンドに売却することはないだろうとみている。
「ヴェルサーチ」はミラノで現地時間21日夜に、パワフルでセクシーな19年春夏コレクションを披露したばかりだ。