「ユニクロ(UNIQLO)」は9月26日から29日までの4日間、パリでニットの展覧会「ザ アート&サイエンス・オブ・ライフウエア クリエイティング・ア・ニュースタンダード・イン・ニットウエア」(The Art and Science of LifeWear Creating a New Standard in Knitwear)を開催する。
会場に選んだのは、ルーブル美術館の並びで、チュイルリー公園の一画にあるジュ・ド・ポーム(Jeu de Paume)国立美術館。柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、「ナポレオン3世が建てた由緒ある場所。今回の催しは、われわれが掲げているコンセプト“LifeWear”をより深く知っていただくために企画したもの。パリ、フランスのみならず、世界にどう貢献していくか、社会をどう良い方向に変えていくか、どれだけニットについて真剣に考えて作っているかを伝えたい」と切り出した。
これまで、「ザ・アート&サイエンス」と題した展示会を、昨年の春と秋の2度ニューヨークで行ったが、今回はパリでの開催を選んだ。「パリは世界的なファッションの都。とくにジャーナリストが多く集まるパリコレ期間中にイベントを開催したことに大きな意義がある」としている。
展覧会は5つのゾーンで構成。会見が行われた「100のカラーを持つニット」ゾーンでは、100色のカシミヤを3色ずつ組み合わせた1000のモジュールを吊るし、「ユニクロ」のニットの多彩な色を表すインスタレーションを飾った。2つ目の「ニットウエアの未来」ゾーンでは、島精機の最新鋭のホールガーメントの編み機を置き、シームフリー(無縫製)で立体的な“3Dニット”が自動で編まれる様子を披露するとともに、映像や、ライゾマティクス(Rhizomatiks)によるデジタルアートを融合したインスタレーションで、「ユニクロ」の先進性とホールガーメントの革新性を表現した。展示構成は、東京で活動するフランス人建築家エマニュエル・ムホー(Emmanuelle Moureaux)が担当した。
3つ目の「受け継がれる職人技」では、中国のカシミヤ工場内での生産工程を映像で紹介。無機質で機械的な様子かと思いきや、着色された毛を混ぜて色出しをしたり、パーツを縫い合わせるためのリンキング機へのセットや、立体ライトボックスに完成品を被せて穴や不良がないか人力でチェックするなど、クラフツマンシップとテクノロジーがニットウエア作りにも生かされていることがわかる内容としている。
4つ目の「パーフェクトスタイリング」では約30体のマネキンにより、ニットを軸としたユニクロのスタイリングのバリエーションを見せ、自分らしいスタイルを作り出せる、洗練されたデザインをアピールした。5つ目は「コラボ限定品のポップアップストア」で、パリのブランド「メゾンラビッシュ(MAISON LABICHE)」「カー(KEUR)」「アンドレア クルー(ANDREA CREWS)」と協業。「ユニクロ」のカシミヤに各ブランドが刺しゅうを施したアイテムを、マルシェはアトリエ、空港をモチーフとした空間で紹介し、同展覧会でのみ購入できる仕掛けだ。
松下久美:「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力小売企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルもカバー。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)