ファッション

「ハーパーズ バザー」ディレクターのカリーヌ・ロワトフェルドが来日 「CR」日本版創刊の中身を語る

 「ハーパーズ バザー(Harpers’ BAZAAR)」のグローバル・ファッション・ディレクター、カリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)が2012年に創刊した「CR ファッションブック(CR FASHION BOOK以下、CR)」の初の国外版となる日本版(ハースト婦人画報社)がローンチされ、10月24日にブックマーク(BOOKMARC)で日本版創刊を記念したサイン会が行われた。さらに翌日にはカリーヌが主宰するシークレットパーティー「バザー アイコンズ バイ カリーヌ・ロワトフェルド(BAZAAR ICONS BY CARINE ROITFELD)」が恵比寿ガーデンプレイスで開催され、豪華な顔ぶれが集まった。カリーヌに「CR」についての思いを大いに語ってもらった。

WWD:「CR」イベントでサイン会を実施した感想は?

カリーヌ・ロワトフェルド(以下、カリーヌ):ファンに会えて感動的だった。私の自伝や10年前の雑誌を持ってきてくれた人もいたわ。

WWD:初の国外版創刊に日本を選んだ理由は?

カリーヌ:私が選んだというより、日本が私を選んでくれたというのが正しい。日本からオファーをいただいたのだけど、日本はファッションの国、雑誌の国だと思うから、とても意義がある。そして私は黒というカラーが大好きだけど、黒は日本人が一番似合うと思う。

WWD:あらためて「CR」とはどんな雑誌なのか?

カリーヌ:ずっと仏版「ヴォーグ(VOGUE)」で編集長を務めてきたから、カメラマンやモデルと一緒に作り上げる撮影の現場が大好きだということ。さらに少し言葉は強いけれど、検閲のない、自分の考える好きなモードについて言いたい、見せたい、書きたいという強い意志があった。決して仏版「ヴォーグ」に検閲があったというわけではないけれど、「CR」は自分の名前のもとで、責任を持って自分のモードに対する熱意や言いたいことを言える場だと思う。

WWD:読み物とビジュアルのバランスは?

カリーヌ:ファッション誌を手にする人は、だんだん怠け者になって文章を読まなくなってきているように感じる。いかに短く目を引くような文章にするのかが重要になる。今回とくに文章を多めに入れたわけではないけれど、興味を引くような女性のストーリーを載せている。もし、バランスがよいと感じてくれているのならば、それはタイトルや文章のトーンが守られているからだと思う。

WWD:起用したモデルはどんどん飛躍していくが、モデルを選ぶポイントは?

カリーヌ:今号ではジジ・ハディッド(Gigi Hadid)とハリマ・アデン(Halima Aden)をダブル表紙で起用した。今でこそジジはトップモデルだけど、最初に彼女を起用したのは「CR」だった。「CR」には才能あるモデルを発掘する強さがある。ハリマも私たちの雑誌で初めて起用した。ジジもハリマもユニセフ(UNICEF)の親善大使を務めている。ハリマは自身が難民キャンプにいて幼少期はユニセフに助けられたことがあり、一方、ジジは父親が難民だった。子どもたちを支援するためにウェブサイトで募金を呼びかけ、集まったお金を寄付している。

WWD:社会的な問題に取り組む雑誌でもあると?

カリーヌ:一般的に言えば、皆の「声」を届けるということ。私は決してこの「CR」を政治的なことに利用したくはないが、子どもや環境といった社会的な問題に取り組むという意味ではよいツールだと思う。実際にモード界の大きなトレンドでもあるが、ゾウの保護活動や海洋環境保全の活動をしていたり、子ども、乳がんといったさまざまなテーマに取り組んでいる多くのモデルがいたりする。そうした人たちの支援や、ムーブメントとして「CR」も取り組んでいる。

WWD:日本限定のページもあるが?

カリーヌ:福島リラをニューヨークで撮影した。今号のテーマが“迷信”で、彼女の黒い影を映し出した。もう一つのコセプトは、よりクラシックなモードの着こなし方を「CR」的に見せている。この2つのコンセプトで構成している。

WWD:撮影における好きな瞬間は?
 
カリーヌ:感情やアイデアをシェアできるとき。フォトグラファーはいわば映画監督で、モデルは女優のようなもの。ただ写真を撮られるのではなく、モデルが主体的に参加するときが一番よい写真が撮れる。その瞬間が好き。

WWD:デジタルにはない、紙にしかできないことはあると思うか?

カリーヌ:ええ。必ず紙には何かあると思う。それは本当に幸運なことだと思う。触り心地、演出、効果などオンラインでは出せないこともある。オンラインは情報を早く提供する意味ではすばらしいツールだけど、保存はしないで消費していくようなもの。「CRファッションブック」という名前の通り、私たちが目指しているのは“コーヒーテーブルブックといって、テーブルの上で読んで、置いてまた戻ってきて読み返したくなるようなもの。絵画といったらおこがましいかもしれないけれど、絵画のように何か画像の後ろに隠されたメッセージを感じてもらえたらと思う。

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