来年で創業50周年を迎える仏発ブランド「パコ・ラバンヌ(PACO RABANNE)」のリブランディングが進行中だ。アイコンでもあるメタルパーツで作るバッグやウエアをはじめとしたブランドのDNAが、現代の若者に受け入れられると読んで価格帯の見直しを行った。その他にも外部のクリエイターやメディアとコラボレーションを行うことで常に新しいものを提供し、2018年3月期は前期比47%増と伸長した。先日発表した2019年春夏コレクションもこれまでとは異なってエキゾチックなテイストが加わり海外バイヤーからの評価が高かった。17年から「パコ・ラバンヌ」を率いる、バスティアン・ダグザン(Bastien Daguzan)=ジェネラル・ディレクターに変化への挑戦について聞いた。
WWD:現在の「パコ・ラバンヌ」のビジネスの状況は?
バスティアン・ダグザン=パコ・ラバンヌ ジェネラル・ディレクター(以下、ダグザン):2018年3月期は前期比47%増と好調だった。メーンとなる市場は欧米。ヨーロッパだけで全体の50%を占める。全体の15%を占めるアジアは急速に成長しており、日本もとても魅力的なマーケットだ。
WWD:前期比47%増の要因をどう分析する?
ダグザン:「パコ・ラバンヌ」は長い歴史を持つが、5年前に新しいブランドへと生まれ変わった。雑誌とのコラボレーションを増やしたり、外部の協力者と協働したりと新しい取り組みを行っている。今後も顧客の視点に立ってブランドを大きくしていく。
WWD:具体的にはどのようなコラボレーションを行っている?
ダグザン:「ヴォーグ(VOGUE)」とはスペシャルビデオコンテンツを制作したり、パリ・カンボン通りにある「パコ・ラバンヌ」唯一の旗艦店のウィンドーをスペインのインテリア雑誌「アパルタメント(APARTAMENTO)」と共同で手掛けたり。今回のドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA以下、DSMG)もそうだが、世界各地でポップアップを展開して、そのポップアップをタッチポイントとして市場を広げている。
WWD:ヨーロッパと比較すると日本での若い世代の認知度はまだ低いといえるが、今後の課題は?
ダグザン:ブランドは5年前にリローンチしたばかり。そういうときは認知度が低いのは仕方がないと考える。日本の市場でやらないといけないのは、ローカルパートナーと話をして、彼らを通してフランスから日本とのコネクションを作ること。まずは国内最高の場所にポップアップを展開することで“どんなブランド”なのかということを見せていく。また、あらゆるクリエイターとコラボレーションすることで、ブランドのヘリテージを使った新しいものを提案していく。モダン(現代的)にしていくことが最も重要なことだと考える。
WWD:「パコ・ラバンヌ」のチーム規模は?
ダグザン:コアメンバーが8人で、グローバルでは50~70人。社外にも協働する人たちがいるので、そういう人たちを含めると100人を超える。チームワークはとても大事で、たくさんの時間を共に過ごすからチームのメンバーのことを“クルー”と呼んだり“ファミリー”と呼んだりする。「パコ・ラバンヌ」がさらに成長するには、結束する必要がある。
WWD:競合ブランドは?
ダグザン:他のブランドを見ていて、いいアイデアだなと思うことはあるが、後追いすることはしない。自分たちが後追いされる側を目指している。また、創業者のパコ・ラバンヌは、バッグやドレスをメタルで作るような発想の男だ。ブランドのDNA自体が独創的でベンチマークブランドではないから、信念に従って邁進していく。その一方で、消費者にとってリアルなブランドでありたいと考える。日常で着られるアイテムに関しては、現実的な価格設定にすることでより直接的な顧客へのアプローチを図っている。短期的な売り上げよりも、リスクを冒して長期的に利益を上げられるような取り組みを選んだ。大きなリスクだったが、リスクを取らなければ成長は見込めないから実行した。そのおかげでいい結果が出せた。若い世代は最も重要だし、彼らのリアクションが最も大きい。かつては価格の面で折り合わなかったが、今は彼らにとっても適正な価格、適正なポジションになったと思う。
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WWD:現在のクリエイティブ・ディレクター、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)はどんな人物?
ダグザン:才能にあふれた人物であるのはもちろんだが、インタラクティブでコラボレーティブ。他者と話をすることで物事を発展させられる人ということだ。ファッションにおいてコミュニケーションを取ることはとても重要だと思う。クリエイション面については、DNAをよりリアルで消費者に受け入れられるものにするよう、絶えずチャレンジしている。私の役割はマーケティングの側面から方針を押し付けるのではなく、彼の考えを理解することだと心得ている。
WWD:2019年春夏コレクションは、ブランドのDNAをベースにした前シーズンまでのコレクションから変化が見られ、バイヤーからも驚きの声が上がった。この変化についてどう考える?
ダグザン:ブランドのクリエイティブ・ディレクターに就任した当初はメゾンのコードを理解しないといけないため、メゾンに敬意を払ったクリエイションになる傾向が強い。しかし、変化があるのはよいことだと思う。私はクリエイションの人間ではないから、彼がよいと思ったことをサポートするし、彼のルーツにあるものを表現できるように環境を整えることが大切だと考える。今季のコレクションは、メゾンのコードを踏まえつつも全面的に従うのではなく、ブランドを異なる方向から表現したコレクションに仕上がった。
WWD:最近のニュースは?
ダグザン:来年6月ごろをめどに、ウェブサイトをグローバルに対応するサイトへとリニューアルする。また来年はブランド創業50周年だから、日本で何かイベントができるといいと思っている。今回のDSMG1階のエレファントスペースで開催したインスタレーションもそうだが、日本で「パコ・ラバンヌ」のDNAを伝えていく。