スイスの時計ブランド「ブライトリング(BREITLING)」は、2018年に立ち上げた「スクワッド構想」を起爆剤に“未開拓の地”中国を攻略しようとしている。スクワッドとは、アンバサダーに任命した各ジャンルのプロフェッショナルが3人1組となったチームのことで、探検家やサーファーなどジャンルごとに結成。目玉はシネマ・スクワッドで、ブラッド・ピット(Brad Pitt)とシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、アダム・ドライバー(Adam Driver)を起用した。ただし中国向けにはドライバーに代わり、映画「トゥームレイダー ファースト・ミッション」などに出演し、中国最大のSNSウェイボーで約950万フォロワーを持つ中国系アメリカ人俳優のダニエル・ウー(Daniel Wu)を指名した。12月10日号の「WWDジャパン」ではビジネス戦略を詳しく伝えているが、ここではスクワッドの発案者であるティム・セイラー(Tim Sayler)「ブライトリング」チーフ・マーケティング・オフィサーとウーへのインタビューを掲載する。
WWD:「ブライトリング」のアイデンティティーとは?
ティム・セイラー「ブライトリング」チーフ・マーケティング・オフィサー(以下、セイラーCMO):ラグジュアリーウオッチで唯一のクールでインフォーマル(堅苦しくない)なブランドであること。もちろんベースとして、プロフェッショナルも認める機能を持つことが挙げられる。
WWD:各時計ブランドは、マニア以外の次世代顧客の獲得に必死だ。その点で「ブライトリング」は、どう間口を広げようとしている?
セイラーCMO:これまでの「ブライトリング」は男っぽいブランドであり、女性客の割合は10%以下だ。しかし、ご存知のように女性マーケットは男性マーケットより大きい。そして女性もスポーティーな時計、ケース径の大きな時計を求め始めている。「ブライトリング」のシグネチャーモデルである“ナビタイマー1(NAVITIMER 1)”は43mmないしは46mmをメーンとするが、10月に発売した“ナビタイマー1オートマチック38”は名称通り38mmと小ぶりで、ビンテージかつワイルドなたたずまいはそのままに、女性客や「ブライトリング」未体験の若年層にもフィットする。
WWD:米国では11月に、中国でも12月中旬にECを開始する。高級時計はECで売れるか?
セイラーCMO:売れる。今でも10万円前後の時計はECで売れている。今後ネットビジネスはますます成長し、「高級時計もECで買う」が当たり前として定着するだろう。「ブライトリング」の中心価格帯である55万~70万円にも勝算があると考える。そのためには実店舗との連携が必須だ。店頭はタッチ&フィール(試着)などの実体験の場所、ウェブはそれを補完する存在としたい。両輪で走らせることでカスタマーの利便性を高めたい。
WWD:「スクワッド構想」を通じてユーザーに伝えたいことは?
セイラーCMO:情熱や目標、ミッションを分かち合い、一体となることの大事さ。そして、そのチームワーク力だ。日本は成熟したマーケットだが、同じアジアでも中国での「ブライトリング」の認知度は低い。その中国でスクワッドは有効だ。ウーはアクション俳優としての基礎がある上に、スマートでエレガント。これは新生「ブライトリング」のイメージと重なる。
ハリウッド俳優が背中で示す「本物」の価値
WWD:世界でただ一人の4人目のスクワッドメンバーに選ばれた感想は?
ダニエル・ウー(以下、ウー):「ブライトリング」はパイロットやダイバーなどプロフェッショナルが認めるブランドだ。そんな“本物”のブランドに認めてもらったことは名誉であり、二つ返事で引き受けた。ブラッド・ピットやシャーリーズ・セロンと並び、選出されたことも誇りだ。
WWD:「ブライトリング」の魅力は?
ウー:マイ・ファースト「ブライトリング」は2000年に購入した。学生時代に建築を学んでいたこともあり、デザイン性があり機能的な「ブライトリング」の時計に引かれた。
WWD:セイラーCMOは、あなたを「スマートでエレガント」と評した。
ウー:大変光栄だ。僕は幼少のころから武術の鍛錬をしている。オレゴン大学在学中にはバーのセキュリティーのアルバイトをしていたのだが、友人に「そんなに細くて務まるのか?」とからかわれた。しかし、タフネス=マッチョではない。男っぽさと上品さは共存できる。今、身に着けている新作の“プレミエ・コレクション”も、まさにそんな存在だ。
WWD:あなたには監督としてのキャリアもある。「ブライトリング」に「スクワッドのムービーを撮ってほしい」とオーダーされたら、どんなプランで臨む?
ウー:探検家やサーファーなど、全てのスクワッドを集めた映像を撮りたい。主役はできれば僕で(笑)。