たくさんの情報が溢れている今、実際に見たり経験したりしなくてもビューティトレンドを知ることができるようになった。しかし、ブランドが行うさまざまな取り組みや新製品は、「百聞は一見にしかず」を痛感させられるものばかりだ。2018年、見て、触れて、楽しむことの大切さを教えてくれた発表会やイベントの中から、とりわけ印象の強かった3つのキーワードを紹介する。
キーワード1:ポップアップイベントの発信力
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今年は多くのブランドがこの“ポップアップ”のイベントやショップを臨時に開き、多くの人の関心を集めた。中でも、東京だけでなく京都と宮島(広島)でも開催した「シャネル(CHANEL)」の「シャネル マツリ」や、「ジョルジオ アルマーニ ビューティ(GIORGIO ARMANI BEAUTY)」の「アルマーニ ボックス」は、ユニークな仕掛けとともに遊び心も見せた空間で、ブランドの世界観を伝える場所としても機能させていた。また、「ランコム(LANCOME)」はシグネチャー的な美容液「ジェニフィック アドバンスト」を試すことのできるイベント「5分間・今すぐ輝き肌体験 バイ ランコム」を開催。これまで知らなかった魅力を改めて感じ、ワクワクした気持ちになった人も多かったはずだ。さらに、18年末でブランドを終了するとして話題の「フローフシ(FLOWFUSHI)」はそのラストイベントを大阪で開催。既成概念に捉われず、自分らしく何事も楽しむことを提案することで、ブランドとして次のステップへ向かっていることを予感させた。19年、“ポップアップ”の発信力はさらにパワーアップしそうだ。
キーワード2:メンズメイクアップという新たな概念の誕生
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かつてメンズコスメは男性の身だしなみを支えるものであり、清潔感を重要視した提案が主だった。その概念を大きく変えたのが今秋。“メンズメイクアップ”というカテゴリーが生まれ、新たなステージが幕を開けた。いよいよというより、むしろついに!という印象が強かったが、このセンセーショナルな幕開けは、ビューティ界のトレンドをけん引する人気ブランド2つが発表したことが大きいだろう。ACROが擁する「THREE」からのジェンダーレスな提案に、ハイブランドの「シャネル」によるメンズメイクアップとそれぞれが新しいサジェスチョンを行った。さらに、2019年2月には「パルファム ジバンシイ(PARFUMS GIVENCHY)」がジェンダーフリーなメイクアップシリーズ「ミスター」から14年ぶりの新作を発表。メンズメイクアップの市場の活況を期待したい。
キーワード3:相次いで発表されたマットルージュ
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ビューティにおいて時代を映し出すものの一つといえるのが、リップカラーだろう。例えば、「イヴ・サンローラン (YVES SAINT LAURENT)」のフューシャピンクのように、今もなお語り継がれ、折に触れて思い出されるルージュカラーがある。そうしたアイテムの持つ魅力には艶やかさがあり、この数年はメイクアップにおいて欠かせないアイテムとして定着している。口紅はいつの時代も女性たちを彩ってきたが、18年はマットの新作が各ブランドから多く登場した。3月にポーラ「B.A カラーズ」はセミマットを、「パルファム ジバンシイ」は5月にソフトマットを、10月には「イヴ・サンローラン」が、ブランドとして究極のマットと称する色をそれぞれ提案。マットと一口に言ってもさまざまだがメーンカラーはいずれも赤で、鮮やかな色ではっとするほど印象的な口もとに仕立てる。凛とした表情を生むルージュは、今を生きる女性たちへの賛美なのかもしれない。
渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している