阪急阪神百貨店と高島屋は、2018-19年秋冬に、大手アパレルメーカーのキャリアブランドのウールコートに関して共同仕入れを行った。年明けのクリアランス時期に、両社ともフロアの目立つ位置で当該ブランドのコートをプロパー価格で販売。暖冬で市場全体としてウールコートが大苦戦する中、両社とも一定の成果を収めた。取り組みの目的は、人気品番を中心に商品が集まりづらい地方百貨店にもしっかりと商品をそろえ、売り上げ増につなげること。クリアランス期も値引きをしないことで、消費者の価格への不信感を払しょくすることも狙った。
阪急阪神百貨店は、阪急うめだ本店、阪神梅田本店の他、三田阪急、都筑阪急など計11店で実施。高島屋は、日本橋や新宿、横浜など、グループ6店で行った。取り組んだのは、ワールドの「アンタイトル(UNTITLED)」「インディヴィ(INDIVI)」、オンワード樫山「23区」、フランドルのブランドなど。
取り組みの発端は、17年に厳冬でコートが不足したこと。特に、都心店と比べて販売力が弱く、普段からあまり商品がまわってこない地方百貨店はコートの弾切れに泣いた。こうした状況は、地方百貨店にとって恒常的な悩みの種だ。それを受けて、2社でメーカーから共同仕入れを行うことで十分な商品量を確保。その代わり、集客が見込める年明けのクリアランス期に、両社各店で目立つ場所でのプロパー販売フェアを仕掛けた。
阪急うめだ本店の4階キャリアフロアでは、エスカレーター前の催事スペースで1月2~8日に、当該ブランドを中心にした値引きしないコートの催事を開催。7日間で、イベント予算に対し20%増の売り上げだったという。地方店においても、当該ブランドのコートの1月のプロパー売り上げはもちろん前年を上回った。「これまでは、最も気温の低い1~2月にプロパーで販売するコートの絶対量が、特に地方店で不足していた。この取り組みで主力商品の品ぞろえが充実し、成果につながった」(伊吹顕・阪急うめだ本店第一婦人服商品統括部マーチャンダイザー)という。
高島屋各店も、同様に年明けに当該ブランドのコートのプロパー販売の催事を行った。11月~19年1月のキャリアゾーンのコートのプロパー売上高は、暖冬によって前年同期比13%減だったものの、当該ブランドは同9%減まで抑えている。前年実績は割りながらも成果を出している。
キャリア婦人服といえばかつては百貨店の屋台骨だったが、ファッションビルやECの台頭を受け、長く苦戦が続いている。キャリア婦人服売り場を縮小し、好調な特選や化粧品などの売り場に変えることを公言している百貨店もある。今回の共同仕入れなどの取り組みで、浮上のきっかけをつかみたいところだ。