ファッション

米国ブランドに注文したメード・イン・USAの“アメリカらしくないシャツ”

 “シャツが売れない”――メンズの世界でここ数シーズン、ため息交じりに繰り返される言葉だ。1月にイタリア・フィレンツェで開かれた世界最大のメンズ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」でも、同じ言葉が聞かれた。事実、おしゃれ自慢の来場者の多くはジャケットこそ着用しているが、インナーはタートルネックニットばかり。

 僕は、ほぼ通年シャツで過ごす。半年ほど前までは妻が不承不承アイロンを掛けてくれたが、ついに嫌気が差したようで今では自分で行っている。そして、それが楽しくもある。シャツを着ていないとバリアがないようで、きっと女性がノーメイクで出掛ける感覚と似ているのではないかと想像する。

 毎日着ているから、こだわりも強くなる。行きつく先はカスタムオーダーだ。中肉中背の僕は典型的な日本人体形でもあるようで、オーダーしがいがないともいえるのだが、それでも“世界に1枚だけのシャツ”という響きは悪くない。悪くないどころか、快感に変わりつつあり、先日「インディビジュアライズド シャツ(INDIVIDUALIZED SHIRTS以下、インディビ)」で5回目のオーダーをした。

「シャツをカスタマイズするとは、つまり料理の“シズル”を感じることだ」

 2カ月前の記事で、「変わらないことこそ、アメトラの魅力だ!」と叫んだにもかかわらず、今回のオーダーでは“アメリカらしくないアメリカンシャツ”を作った。

 “ポロカラーシャツ”、いわゆるボタンダウンシャツ(B.D.シャツ)を生んだ「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」のカスタム部門を長く任されていた「インディビ」のアイコンもB.D.シャツだ。生地は、しっかりと肉厚なオックスフォードが王道。そこで僕は、B.D.とオックスフォードを選ばないことから始めた。

 「インディビ」のカスタマイズを常時受け付ける国内唯一のショップ、原宿のユーソニアングッズストア(USONIAN GOODS STORE)ではオーダーを2枚から受け付けているので(価格は2枚で4万8000円~)、僕も2つの“アメリカらしくないアメリカンシャツ”を作った。

 1枚目は、“ザ・トラディショナル”と呼ばれるロングポイント気味の襟型にした。来日したジム・ハイザー(Jim Heiser)=インディビジュアライズド シャツ社長が、「1980年代の『ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)』をイメージしたものだよ」と教えてくれたからだ。イタリア仕様にして、アメリカから距離を取った。生地は、薄く滑らかなポプリン。「インディビ」のカフ型はラウンドが多いが、これも“パラッツィ”と呼ばれるイタリアイメージの角ばったものにした。前立てもアメトラ定番のトップセンターレギュラーから、フラットなフレンチフロントに。着用時は“絶対に”タックインするから、着丈を2インチ長くして裾が飛び出さないようにした。とどめは仕事愛丸出しの、左胸の下の“WWD”の同色刺しゅうだ(笑)。

 2枚目は、“アルチザン”というワイドスプレッドカラーを選択した。「こちらは『グッチ(GUCCI)』が着想源さ」とハイザー社長。ファブリックは縦糸に水色、横糸に白の糸を使い、市松模様を浮き立たせたメランジェ生地にした。カフ型の“パラッツィ”とフレンチフロントの前立て、2インチ長い着丈は1枚目と同様だ。カスタマイズできるパーツごとに“アメリカらしぬ”選択をしながら、それをメード・イン・USAしてもらうというアマノジャク感もカスタムオーダーの醍醐味といえる。

 言葉を商売道具とするわれわれだが、「オンでもオフでも着られる」という謳い文句は、「どっちつかず」もしくは「帯に短したすきに長し」の言い換えだと思っていた。でもこの2枚は、スーツに合わせてよし、ジーンズに合わせてよしの汎用性を持つ。……と信じている。

 以下のスケジュールでトランクショーも行われるので、近くて遠いカスタムシャツの世界をのぞいてみてはいかがだろうか?

■「インディビジュアライズド シャツ」トランクショー
日程:3月2〜3日、9~10日
場所:ビームス プラス 有楽町
住所:東京都千代田区有楽町1-12-1

日程:3月16〜17日、23~24日
場所:ビームス 神戸
住所:兵庫県神戸市中央区三宮町1-4-3 クレフィ三宮1階、地下1階

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