アラブ首長国連邦(UAE)生まれの38歳、ハリド・アル・カシミ(Khalid Al Qasimi)が立ち上げた「カシミ」は、日本市場への本格進出に向けた足がかりとして、オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)表参道店で4月4日までポップアップショップを開いている。オープンに合わせてデザイナーのカシミも来日し、バイヤーやプレス向けの展示会を行ってブランドをアピールした。
カシミは5歳からイギリスに移り住み、セント・マーチン美術大学を卒業後にウィメンズブランドを08年にスタート。その後メンズに転向し、09年にパリメンズでデビューを飾った。現在はロンドンメンズでコレクションを発表している。英国仕込みのベーシックなカジュアルにミリタリーやスポーツをミックスし、マスタードイエローやボルドー、サンドベージュ、タバコなどトーンをそろえたきれいなカラーリングが特徴だ。イタリア製の上質素材にこだわった品のよさと、モードとストリートの中間に位置する汎用性の高いスタイルが、クリエイションに傾倒しがちなロンドンメンズの中で異彩を放つ。特にここ数シーズンは従来よりも安定感がぐっと増したと日本のバイヤーからの評価も高い。現在の主たるマーケットは中東と日本。東京ではオープニングセレモニーをはじめ、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)、ウィズム(WISM)、ジョンブル プライベート ラボ(JOHNBULL PRIVATE LABO)などが取り扱う。
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カシミは「ビジネスはゆっくりだが着実に伸びている。ロンドンメンズに参加しているデザイナーの多くは、質よりもクリエイション重視だ。われわれも数シーズン前まではコンセプチュアルな服作りに挑んでいたが、今は質にこだわり、特定の人のワードローブを思い描いたリアルクローズの意識が強い」と語る。とはいえ、素材の複雑な切り替えやアーティストと協業したイラストをウエアに大胆にあしらうなど、強いデザインは随所に健在だ。「ルーツである中東の要素や、社会情勢に対するメッセージを込めるのがブランドのこだわり。でも、結局はクオリティーが高くないと人の手に届かないし、伝わらない。インターナショナルで受け入れられる服が作りたいんだ」。
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毎シーズン登場するアラビア語のグラフィックは、自身のルーツを込めたいという思いからだ。日本のポップアップでは、アラビア語のグラフィックと“イマガソノトキダ TOKYO”の文字がプリントされたパーカ(4万1000円)、Tシャツ(1万4500円)、トートバッグ(4万4000円)を販売する。1980年代の日本のグラフィックポスターに着想を得たというが、「カシミ」の日本市場にかける意気込みも表している。「日本の市場をさらに拡大していきたい。好調な中東と日本を伸ばし、直営店を開きたい。パリメンズへの復帰も目指している」。