アダストリアの2019年2月期は売上高が前期比横ばいの2226億円、営業利益が同43.7%増の71億円、純利益が同4.5倍の38億円だった。上期(3~8月)は苦戦を強いられた同社だが、下期(9~2月)からは、期中トレンドの変化に対応できるリードタイムの短い生産対応や、顧客と商品企画のマッチングを見直したことで基幹の「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」と「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」が復調し、大きく巻き返した。
上期は既存店売上高が前年同期比4.2%減。売り上げを重視するあまり、閑散期生産で在庫を積みすぎた。期中のトレンドや天候などの変化に対応できず、顧客のニーズと商品のミスマッチを引き起こした。在庫を減らすためのセールの前倒しや過度の値引きにより、ますます収益を悪化させた。
その反省から抜本的な見直しを図った下期の既存店売上高は同3.0%増。福田三千男会長兼社長は「(上期の苦戦が)当社にとって大きなターニングポイントになった。以来、全てのブランドでモノ作りに対する姿勢を見直し、お客さまのニーズに合わせたものを『適時・適量・適価』で送り出せるよう、体制をスピーディーに変更した」と振り返る。下期はMDを6~8シーズンに細分化し、さらにリードタイムの短い期中生産やクイックレスポンス(QR)でトレンドや気候にあった商品を小刻みに打ち出した。全体の生産量を絞ったことで、セール期間も短縮。春夏物の立ち上げを早めることができ、鮮度の高い売り場作りに貢献した。
恒例だった年初の福袋も販売をやめた。「これからは、お客さまに求められているか分からないものは、作らない。商品と値札を見て、納得した上で買っていただく」(福田会長)。5月にはEC購入品の店舗受取りや試着予約などのオムニチャネルサービスを導入し、購買の利便性強化や顧客接点の拡大を目指す。
海外事業では、中国・香港での不採算店整理にめどが付いた。今秋には上海に約1980平方メートルと最大級の規模となる「ニコアンド(NIKO AND...)」の旗艦店をオープンし、中国展開を仕切り直す。