ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は5日、中国製品に対する2000億ドル(約22兆円)相当の関税を10日から現在の10%から25%に引き上げると表明し、中国への圧力を強めた。同氏はツイッターに「中国との貿易協議が続いているが、進展が遅すぎる。中国は再交渉を試みているが、答えはノーだ!」と投稿した。また、現在は関税を課していない3250億ドル(約36兆円)相当の中国製品についても25%の関税をかける考えを示した。
トランプ米大統領はこれまで、米中の貿易協議は順調に進んでおり合意に近づいていると前向きな発言を繰り返してきたため、今回の発言は中国側など多くの関係者に驚きをもって受け止められている。米通商代表部のロバート・ライトハイザー(Robert Lighthizer)代表によれば、米国が強硬姿勢に転じたのは中国側が再交渉を試みたからだという。
2018年7月に米政府が中国への制裁として2000億ドル(約22兆円)に相当する6031品目への10%の追加関税を発表した際、レザーグッズやハンドバッグ類は対象となったものの、衣料品の大半は含まれなかったため、あまり影響を受けなかったアパレル企業も多い。今回のトランプ米大統領の発言は最終協議を前にした中国への威嚇と見る専門家が多いが、アパレルやフットウエアも関税引き上げの対象となるため、実施された場合はファッション業界に広く影響する懸念もある。
スティーブ・ラマー(Steve Lamar)米アパレル&フットウエア協会(American Apparel & Footwear Association)エグゼクティブ・バイス・プレジデントは、「ただの脅しである可能性もある。多くの人々がそうであってほしいと願っているが、関税引き上げになる可能性も捨てきれない」と語った。
デイビッド・フレンチ(David French)全米小売業連盟(National Retail Federation)シニア・バイス・プレジデントは、「よくないサインだ。米大統領は貿易戦争を加速させようとしているように見える。今回の発言には失望した」と述べた。
カレン・ギバーソン(Karen Giberson)米アクセサリー協会(Accessories Council)会長は、「18年9月から関税引き上げの話はあったが、交渉は順調に進んでいるように見えたため、追加課税はないものとして商品の値付けをしているメーカーが多いだろう。数日後に関税引き上げを実施すると言われても対応できるわけがないし、その分だけ商品が値上がりしても構わないという消費者などいない。短期的にはメーカー側が不利益を被るしかないが、いずれ値上げは避けられないだろう」とコメントした。
影響を受けるのはファッション業界だけではない。米最大の小売り企業ウォルマート(WALMART)は、関税引き上げが実施された場合、自動車用のチャイルドシートやベビーベッド、自転車、ペット用品、バックパックや帽子などの日用品の値上げをせざるを得ないと以前から警告している。また、家具や生活用品を取り扱っているコールズ(KOHL’S)やJ.C.ペニー(J.C. PENNEY)などの百貨店や、TJXなどのディスカウントストアも影響を免れないだろうと専門家は見ている。
米中は18年12月から貿易協議を続けてきたが、トランプ米大統領が制裁強化を表明したことを受け、中国の劉鶴副首相が再会談のため予定通り9~10日にワシントンを訪問するかどうかに注目が集まっている。