ジャケットやベストに電動式の送風ファンを装着したファンウエアが、主要マーケットである建設業界だけでなく一般市場でも注目され始めている。スポーツメーカーを筆頭に多くの企業がファン付きウエア開発に乗り出す中、その先陣を切っているのが「空調服(TM)」だ。同製品は市ヶ谷弘司・空調服会長が“汗を無駄なく体の冷却に使い切る”という考えのもと、開発。2004年に発売されて以降、そのアイデアの新規性や着用時の涼しさから注目を集め、建設現場の作業着として普及していった。「作業着に電動ファンを取り付ける」という奇抜なアイデアはいかにして生まれたのか?「空調服(TM)」は今後、どのような未来を見据えているのか?同製品の生みの親である市ヶ谷会長に話を聞いた。
「効率的な冷房」の開発へ
着目したのは人の汗
「空調服(TM)」は、衣服に装着した電動ファンで汗を蒸発させることで生まれる気化熱(液体が気体になる際に周囲から奪う熱)を利用して体を冷却させるものだ。そのはじまりは、「家を涼しくする冷房ではなく、エネルギーをほぼ使わない冷房を作れないか」という市ヶ谷会長の考えだという。当初は水を使用した小型ファンを装着した衣服を開発したが、「水が漏れ出てしまったり、汗が蒸発せずに蒸れてしまったりと問題が多かった」と振り返る。そこで着目したのが人の汗だ。「気温が上昇すると、皮膚や体で感知して脳から指令を出し、必要量の汗を出して体を冷やそうとする。人間にはほぼ完ぺきなクーラー、すなわち“生理クーラー(R)”が備わっている。唯一足りないのは、汗を蒸発させるために空気を流す器官。そこで空気を流すためのファンを衣服に取り付け、汗を無駄なく蒸発させれば、人の体温は適温になると考えた」。市ヶ谷会長の“生理クーラー理論”のもと、開発されたファン付きウエアはその後、ファンの大きさやバッテリーなどの改良を行い、2004年に「空調服(TM)」のプロトタイプが完成。細かなアップデートを重ねながら現在に至る。
口コミで徐々に人気拡大
現在スーパーゼネコン各社で採用
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「空調服(TM)」の人気が拡大したのが、建設会社などの作業着分野だ。着用時の涼しさから、ゴムの成型工場や中小の建設会社などが、夏場の作業着として「空調服(TM)」を利用するようになったという。「今までにない全く新しいものを売るのは難しく、発表当時は低空飛行が続いた。倒産の一歩手前までいったこともある。ただ、商品の真新しさからテレビをはじめとするマスメディアに取り上げられるようになり、認知を拡大できた。その後は実際に使用してくれた人たちの口コミなどで徐々に人気が広がっていった」と市ヶ谷会長。現在はスーパーゼネコンを筆頭にゼネコン各社、電気設備工事各社、エレベーター各社など数多くの企業の作業着として採用されている。
デザイナーズブランドとの協業で
ファッション化が進む
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作業着分野で不動の地位を確立した「空調服(TM)」が目指すのは、新たな市場の開拓だ。リュックやベッド、座席のクッションなど空調機能の付いたアイテムバリエーションを拡充し、客層の幅の拡大を図っている。19年の5月にはゴルフメーカーのプロギアと協業し、ファン付きのゴルフウエアを開発するなど、スポーツ市場への参入も行っている。さらには、デザイン性を重視した商品を開発し、東京のデザイナーズブランドとのコラボレーションを年内に予定、ファッション化も進めている。「今はマスを狙えるような時代ではないと考えている。まずは『空調服(TM)』が認知されており、ニーズがあると思われるマーケットをセグメントしながら、そのマーケットに相応しいアイテムを投下していく」と市ヶ谷会長は説明する。
デザインと機能の両立を追求
“空調服社会”を目指す
作業着分野から一般市場へ徐々に拡大をしている「空調服(TM)」だが、「今後は生活のあらゆるシーンで『空調服(TM)』が活躍する“空調服社会”を目指す。海外展開も視野に入れており、アメリカに販売会社を設立している」と市ヶ谷会長。「『空調服(TM)』はこれまで、さまざまな改良を行ってきた。まだ成長過程で、伸びしろがある。デザイン性を維持しつつ、よりエネルギー効率を高めていく。『空調服(TM)』はもともと、効率のいいクーラーを作るという考えのもと開発したもの。今後もアップデートを重ね、ゆくゆくは持ち歩くクーラーのような存在にしたい」。
空調服
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