「ナイキ(NIKE)」は7月1日、米独立記念日の4日に発売を予定していた“エア マックス 1 クイックストライク(AIR MAX 1 QUICK STRIKE)”特別モデルの発売中止を発表した。
記念モデルには、独立戦争当時に考案された「ベッツィー・ロス・フラグ(Betsy Ross Flag)」と呼ばれる13個の星があしらわれた星条旗がかかとの部分に描かれていた。米「ウォールストリート・ジャーナル(WALL STREET JOURNAL)」紙によれば、これに対してアメフト選手のコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が、「奴隷制時代に使われていた旗であり、侮辱的で人種差別的だ」と指摘したことから発売中止を決定したという。
ナイキは、「“エア マックス 1 クイックストライク”の独立記念日向け特別モデルは、古いデザインの星条旗を使用していたため発売を中止する」とコメントを発表。4日の発売を前にすでに小売店などに出荷されていたが、返品処理を要請している。しかし現地メディアによれば、一部の店舗から流出したと見られるものがリセールECなどで販売されており、定価120ドル(約1万2960円)の同スニーカーが1500~2000ドル(約16万2000~21万6000円)で取引されているという。
キャパニック選手は、ナショナル・フットボール・リーグ(National Football League以下、NFL)のサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)に在籍していた2016年8月当時、黒人をはじめとした有色人種への差別に抗議するためにNFLの試合で国歌斉唱中に起立することを拒否してひざまずいた。これに賛同した選手らが同様の行動を起こして「テイキング・ア・ニー(Taking A Knee)」という一つのムーブメントとなったが、国旗に向かって起立しない行為に対して保守派が反発したため、NFLはこれを全面的に禁止。キャパニック選手は17年にサンフランシスコ・フォーティナイナーズとの契約を早期終了して以来、事実上NFLから追放されている。
「ナイキ」は、そんなキャパニック選手を“Just Do it”の30周年キャンペーンに起用した。広告は、キャパニック選手のモノクロの顔写真に「何かを信じろ。たとえそれで全てが犠牲になるとしても(Believe in something, even if it means sacrificing everything)」という力強いメッセージを載せている。この広告は24時間で4300万ドル(約46億4400万円)相当のメディア露出価値という驚くべきエンゲージメントを生み出し、これに後押しされた18年6〜8月期決算の売上高は前年同期比10%増の99億5000万ドル(約1兆746億円)となった。